![]() お祭りは、やっぱりすごくにぎやかだねぇ〜。 (8月25日、大瑠璃川花火大会。夏休みはしばらく家族のいる遠方の町でゆっくり過ごしていた中村は、神輿渡御には参加できなかった。ただ、夏休みの終わりが近づいてきているこの時期は、地元の出店のお手伝い。にこにこと和やかな笑顔と共にフルーツ飴の屋台の売り子をしていたが、昔のご近所さんだった屋台のおばさんから「和花ちゃん、しばらく休憩してきていいよ。花火が終わるまで遊んでていいから、たくさん楽しんでおいで」とお言葉をもらうと、)ありがとう〜。ちょっと行ってくるね(と、エプロンを外して屋台を去る。クローバーがプリントされた白いTシャツに、すそにフリルがあしらわれた水色の七分丈パンツ。長い黒髪は小花柄のシュシュでポニーテールにしており、歩きやすいサンダルでてこてこと歩く。出るときにおばさんにもらったりんご飴を片手に、周りを見渡した。花火までまだ時間があるが、祭りは大盛況のようだ。このりんご飴をゆっくり食べられそうなスポットがあるといいなあ、と思いながら人の流れに押されるように歩いて) ![]() 祭になると、こんなに沢山人いたの?っていつも思うー。 (残暑の厳しい夏の終わり、全力でダラけた夏休みもあと僅か。以前隣のクラスの女子に花火大会に行かないかと誘われたが、先約があると断っていた。実際の所はそんな約束はなく、黛は黒Tシャツにユニクロの青い和柄ステテコ、ビーチサンダルというラフスタイルに、「祭」と大きく描かれた内輪をパタパタ仰ぎながら河川敷を一人闊歩していた。りんご飴にチョコバナナ、ベビーカステラなどの甘い物を中心にここぞとばかりに散在して屋台を堪能していると、見覚えのある人物に声を掛けられた。花火大会に誘ってきた女子生徒だった。一人なのかと問われ「一人じゃない、はぐれたんだ」と咄嗟に返して。きょろりと周囲を見回し目に入った、年が近そうで、同じりんご飴を持った、前を一人で歩いている艶やかな黒髪のポニーテール女子の手を取って)あーいたいた。良かった、心配したよー。(口元で微笑みかけてみるが、目は「話しを合わせてほしい」と訴えているようで) ![]() ね〜。人混みでぎゅうぎゅう押されちゃうよ〜。 (りんご飴を持ちながらとことこ歩いていると、こちらに向かって伸びてくる手。それに気づいたのはちょうど、自身の手をとられたときで。ちょっぴり目を丸くして振り向けば、同じ年頃の少年がこちらに向けて声をかけている。あまり頭の回転が速い方ではない中村だったが、彼の眼差しからなんとなく状況を察して)えへへ、ごめんね。だってりんご飴、すごくおいしそうだったんだぁ…(と、手にしているりんご飴を見せながら照れ笑い。とっさに出た“話の合わせ方”がとっても子供じみていて少し気恥ずかしいけれど、さて彼の役に立てただろうか) ![]() もわっと熱気で具合悪くなりそーだね…うげげ。 もーりんご飴に釣られるとか相変わらずだなー(あたかも彼女と親しい間柄であるかのように言ってみせ、ぷくっと頬を膨らませて。「じゃ、そういうことだから」と続けた言葉は同級生に向けて。人混みに流されるように少し歩いて彼女の姿が見えなくなったところで手を離し、)おねーさん、ぐっじょぶ。めっちゃ助かったー。(ぐっと親指を立てて、ニッコリ笑顔。)てゆか誰かと待ち合わせとかしてる?一人なら、よかったら俺とどう?(今日は一人で楽しもうとも思っていたが、何の気まぐれか首を傾げつつ誘いかけて。ナンパするにはラフすぎるファッションだが) ![]() 屋台のおじさんも大変だよねぇ…鉄板の前だもん。 (可愛らしく頬を膨らませる彼に内心和みながら、えへへーとはにかむ。歩き出した彼についていけば、手助けは無事に完了するのだろう。ぐっじょぶと言われれば嬉しそうににこにこしつつ、)それならよかったー。…私のごまかし方、変じゃなかった?(安心したようにほっと胸をなで下ろしてから、こてんと首をかしげて尋ねてみて)ううん、今日は一人…さっきまで出店のお手伝いしてたんだけど、手が空いたから今はぶらぶらしてたんだぁ。だからもちろん!一緒に回ろっか〜(彼のお誘いを、こくっとうなずきつつ快諾。ひとりで過ごすのも寂しいと思っていたところなので、とても嬉しかった)私ね、中村和花っていうの。この近くの…雛ノ森学園に通ってるんだよ〜(一緒に過ごすなら自己紹介を、と思い名乗ってみて。あなたは?というように首をかしげ) ![]() たしかにー!焼きそばが一番ヤバそー。 変じゃない変じゃない、むしろ完ぺきだったね。(とにかく愛想の良い人で良かったと心の底から思った。無茶な振りをしても尚笑顔でいてくれる彼女からの問いかけに、こちらも同じく笑顔のまま絶賛して。)そっか一人かー、俺はともかく、おねーさんみたいなうら若い乙女が一人で花火大会なんてもったいないねー。てか出店の手伝いとか、めっちゃ偉いじゃん。(ひたすら自堕落な黛とは正反対だと感じ、目を丸くして。こちらの誘いに頷きながらのOKをもらえれば、嬉しそうにニッコリと笑って)おっ、良い返事をありがとー。ふーん、中村和花さん…あ、先輩か。なんかもー、びっくりするくらい名前と雰囲気がピッタリだね。あ、俺は黛龍海。俺も雛ノ森学園に通ってるよ、そんで学校のめっちゃ近くに住んでる。(そういえば以前、昇降口のノートで少しだけやり取りをしたことがあった気がする…と振り返りつつこちらも自己紹介を。)じゃーどっか座れるとこでも探そっか。(座れるところでもあればいいんだけど、などと思いながらゆっくりと歩きつつ) ![]() おじさん大変だ…ありがたく食べないとだねぇ。 本当?よかったぁ。いつもはこういうときに上手くアドリブとかできなくって…(自分の演技を褒めてもらえば、嬉しそうにふにゃんと頬を緩ませて)わあ、なんか褒めてもらってばかりで恥ずかしいなぁ…。出店のお手伝いはすごく楽しかったよ!ご褒美だよって、りんご飴もらっちゃったもん。それにあなただって、青春真っ盛りな若い人っていうのは一緒だもん(なんだか感心されてしまっているのかなと思えばはにかむようにしつつも、手に持っているりんご飴を見せながら)えへへ、けっこう言われる。黛くん……あ、…あ〜!いつもノートで見かける子だ!そっかそっかあ、あなたが本物の黛くんかぁ…。えへへ、会えて嬉しいなあ(彼の名前と“同じ雛ノ森学園に通ってる”というフレーズで、すぐに彼が誰なのかぴんときて。そうすればまじまじと彼を見つめ、にぱっと屈託のない笑みを浮かべよう。「私も学校の近くだよ。寮生なんだぁ」とご機嫌真っ盛りで)うん、そうしよ〜(と、歩き出す彼に続いて。辺りを見回しながらも、彼とはぐれないように注意しながら歩いていると、屋台から少し外れたところにベンチを発見。周辺にぽつりぽつりと人がいるが、そのベンチはまだ空いていて)ね、あのベンチはどうかなあ?(と、指で示しつつ彼に声をかけよう) ![]() そーだね。屋台の焼きそばが高いのもそういう事かもね? あ、そぉなんだ?苦手なのに付き合わせちゃって悪かったね、でもありがとー。手伝いも楽しかったなら良かったね、おねーさんに手伝ってもらってよかったって、頼んだ方も思ってるだろーし、俺だったら絶対ヤダって断るし。(ぺろっと舌を出してお茶目に笑い)俺は男だから別にいいけどね、そのりんご飴おいしそー、俺のやつよりでかいじゃん。俺もおねーさんの店で買えばよかったな。(彼女に倣って黛もりんご飴を見せるようにし、ぷくっと頬を膨らませて)穏やかな子になってほしーって名付けられたんだったら子育て大成功だねぇ。あっ、俺のことわかる?俺も先輩に会えて嬉しーよ。いつもノートで和ませて貰ってるー。(無邪気な笑みには薄く微笑んで返して。「寮かぁ…じゃあ一人暮らし大変だね」と付け加え。)おっ、丁度いいところが空いてるねー。行こう行こう。(彼女の指差す先を見て、運が良かったと喜んで。ベンチに隣同士腰掛ける。)ふ〜…さすがにちょっと疲れたかな、でも中村先輩は仕事してたからもっと疲れてるよね。(へにゃりと笑い、先程のりんご飴を口にしながら他愛ない話を。間も無く花火が始まる時間のようだ。) ![]() あっ…人件費!(ぽん、) ううん、楽しかったから全然いいよ〜。…えへへー、やだなあ。さっきから褒められてばっかりで照れちゃうよ(ふにゃ、とはにかみ)…そういうものなの?…ふふ、残念だったねぇ…でもそっちのりんご飴も、きっと屋台の人の愛情がたーっぷり詰まってるんだよ、きっと(ほっぺを膨らませる彼を、微笑ましいなーなんて思いながら、そう優しく声をかけて)今となっては「もうちょっとてきぱき動きなさい」って怒られることもあるんだよー、のほほんとしすぎてるんだぁ。えっそうなの?…ふふ、こうしてノートで見かける人と直接会えるなんて嬉しいねえ(大変だね、と言われれば「もう3年目だから、慣れたよー。黛くんは実家暮らし…だよね?」と話を振ってみよう。そんなやりとりをしつつ共にベンチに腰掛ければ、ふわりと隣にいる貴方に笑いかけ)疲れたのは疲れたけど、やりがいがあったから全然いいんだよー。お手伝いがあったからお祭りに来れたんだし、黛くんとも会えたからね(と、嬉しそうに笑ったところで、視界に何かが過ぎる。そちらを向けば、どん、という音と共に、夜空にぱあっと光が咲いた。花火がはじまったようだ)…綺麗だねぇ〜(のほほんと笑いつつ、隣にいるであろう彼を見た。元より楽しみにしていた花火大会だったけれど、こうして綺麗な花火を見れて、友達もひとりできた。美しい花火を見ながら、中村の心は温かく満たされていたのだった) ![]() それだ!かっこよくゆーと、酷暑労働手当的な? それならよかったー。やーそんな反応されたらこっちが照れちゃいそーだよー(薄く微笑み返して)多分そーゆーものだよ、俺も実際よくはわかんないけどね。愛情かー…なんかそんな風に考えたことないから不思議な感じ。でも、そーかもね、じゃー俺も大事に食べないとなー。(膨らませた頬をしぼませて、納得した様に頷き)ああー、めっちゃわかるー、俺もそれ時々言われるもん。せっかちさんとはテンポ合わないよねぇ。こっちはこれが精一杯なのにさ。(黛自身も相当マイペースなので同じような指摘を受けたことがあったので、彼女の言葉には共感できる。相当省エネで生きているので、精一杯、というのは語弊があるけども)ほんとに。文章だけやりとりしてる人と、学校でもないこんな場所で会うなんてさ、すっごい偶然だ。そーそー、実家暮らし!気楽で良いよー、たまに家事手伝わされるけど。でも一人暮らしは全部自分でやらなきゃだから俺にはムリそう。やっぱ中村先輩ってすげー。のほほんだけどやることはちゃんとやるからデキ女って感じー。やりがいかぁー…俺は何かを頑張るとかしないし、そーゆー達成感とかまだよくわからないけど、先輩がそう感じてるんなら良い経験だったんだねぇ…って、そーゆー事言っちゃう?まじかー。(なんとなくそんな雰囲気は感じていたが、ここで確信した、この人は天然タラシなのだと。驚いた様に目を見開いて、照れ隠しに顔を伏せよう。暗いので彼女にはわからないだろうが、若干頬を赤らめて。俯いた顔はしかし、乾いた音が響くとすぐに上げられて。夜空に咲く花に目を奪われる)…ほーんと。来てよかった。(毎年行われる花火大会も祭りも、めんどくさいという理由で殆ど自宅で過ごしていた。今日も本当はそのつもりで、気まぐれに出かけただけだったが、意外な出会いと不思議な縁に、空を見つめながら「たまにはこーゆうのも悪くない」なんて独り言のように。) ![]() わ、かっこいい!…お客さん達みんなで、手当をあげるんだねぇ。 え〜?なんで黛くんが照れるの?(こてん、と不思議そうに首をかしげて。りんご飴の件で納得してくれた様子の貴方に、にこにこしながらひとつ頷こうか)わ、黛くんも?仲間だ〜!私たち、のんびり屋コンビだねぇ(貴方が同意してくれたならぱっと顔を輝かせてほのぼのと笑おう)ね〜。ふふ、家事はみんなで協力するのが一番だよ〜。私も、実家で暮らしてた頃は弟や妹に手伝ってもらったりしたなぁ。…ええっ?デキ女なんてはじめて言われたよ〜!でもなんか嬉しい…ふふ、もう、黛くん。褒められすぎて、今度は照れるんじゃなくて調子に乗っちゃうよ〜(えへー)……?(自身の何気ない発言に対する貴方の反応に、きょとんとする。何か悪いことを言ってしまっただろうかと気になった。そんな中、花火が打ち上がった際に聞こえた“来てよかった”。貴方にとってこの時間は、少しでもいいものになっているのかな、とそう思えば嬉しくて。それから中村は穏やかに花火を見ていた。あんまりに見とれてりんご飴を落としそうになり、貴方に向けて照れ笑いを浮かべたりもするのだった。そうして花火が終われば、)綺麗だったねぇ。…私はそろそろ帰ろうかなって思うけど、黛くんはどうする?(なんだか名残惜しいけれど、けっこう遅い時間になってしまっていた。腕時計へ視線を落とせば立ち上がり、貴方を振り向いて) ![]() そー考えると、高くてもムカついたりしないよねー。 え〜?寧ろなんでわかんないの?(彼女の口調を真似るように、やはり黛も同じように首を傾げて)イエーイ、のんびり屋コンビー(言葉とは裏腹にまったりとしたテンションで右手を挙げて、ハイタッチを求め)たしかにー。すげーめんどくさくていつも嫌々だけど、1人で全部やるのは大変だから、やっぱ手伝わないとねー。中村先輩は調子に乗ってもいいんじゃない?家事全般できちゃう系女子はポイント高いし、もっと自信持っていいと思うけどな。(俯きながら考える、どうしてこんな反応をしたのか、きっと彼女はわかっていないのだろうと。不思議に思っているだろうけど、教えるつもりはなかった。一瞬流れた穏やかではない空気は花火がかき消してくれた。花火に見入っていたため言葉少なだったが、それも終われば「んーっ」と伸びをして)うんうん、綺麗だったねー。もーこんな時間かぁ。俺も帰ろっかな。俺んちも寮方面だから、中村先輩がよければ途中まで一緒に帰ろーよ。(笑顔で提案し、彼女がOKしてくれたなら、共に帰路に着くのだろう) |