長谷川祐未
灯籠って色んな形があるんだね
(初日も残すところ確認テストのみとなった。四限目の終了と同時に気の抜ける欠伸を漏らして、講堂を後にした長谷川がゆったりとした足取りで向かったのは日本庭園である。到着した時より気になっていたが此までの時間に訪れる元気等到底無く。)綺麗だったら写真でも撮ろーかなー。(期待はしていない様子でそんな独り言を零し、歩きスマホながら器用に人の間を縫って進む。其の場所へと到着すれば、漸く顔を上げて――息を飲んだ。)…っ…すっご…めっちゃ綺麗。やばー。(日の入りを目前に控えた夕陽が、美しい日本庭園を照らし出す。終始不機嫌であった長谷川も、其の光景を目の当たりにして心が解けた。語彙力の無さが顕著だが、本人に気にする様子は無いだろう。暫く眺めた後、写真を撮ろうとスマホを構え数歩後退したところで、後方不注意によってどんっと人にぶつかってしまった。)っと…ごめんなさぁい、だいじょーぶ?
白鳥こころ
そうね。灯籠って神社と神棚のイメージしかなかった…
(時刻も17時を過ぎ、そろそろ数学漬けにも飽きて来た頃である。数学自体に別段苦手意識は無いが積分法は好きではなかったので尚更疲弊していた。休憩時間は全て室内で過ごしたが気分転換に外の空気を吸いに庭園へ足を運ぶ。暮れ泥む空の眩しさに本来細い目を更に細めた。吐く息が白く手を擦り合わせつつもよく手入れされた庭園は美しく目を奪われぼんやりと見詰めていた折、背中に軽く何かがぶつかった。大した衝撃でもないのに「あっ」と小さく声が出たのは驚きから。振り向くと自分よりも小柄な少女と目が合った。彼女は面識はないが時折学園で姿を見たことのある女子生徒だった。可愛いと思っていたが近くで見ると一際目を引いた。そんなことを考えつつ)…私は大丈夫。(元来目付きが悪い上に仏頂面で短く応対したものだから怒ってる様に見えているかもしれないが。)えっと…こちらこそ、ごめんなさい。(避けようは無かったがぼーっとしていたのは事実で自分にも非が無い訳では無い…かもしれないと思ったので此方も謝罪の言葉を。)