七瀬環
合宿といえばカレーかな、やっぱり。
(数学漬けの一日もあとはテストの返却を待つのみとなり、多くの生徒で賑わう宴会場の空気は明るい。テストを終えたその足でやって来たのだが既に大半の席は埋まっているようだ。席に着くのも一苦労かもしれない、と一緒に来た友人と思わず顔を見合わせた。メニューが並ぶテーブルを巡り、クリームパスタとオムライスで散々悩んだけれど結局器に盛ったのはカレーである。それに海藻サラダとウーロン茶をトレーに乗せて何とか二人分の空席を見つけた。しばらく授業やテストについて話を交わしたが、一足先に食べ終わった友人はどうやら一階の土産屋が気になるらしい。自分が食べ終わるまで付き合わせるのも悪いと先へ行くことを促して、向かいの席から立つ背を見送る。まだ半分ほど残っているカレーに視線を落としつつ、お茶を飲もうとグラスへ手を伸ばすが。)あ、やばっ。(かちゃん、と小さな金属音がしてグラスが何かにぶつかったのだと理解したときには遅く――サラダ用のフォークが床へ真っ逆さま。カーペットの上に転がる其れを見てはあ、と溜息を吐きながら重い腰を上げるのだ。)
神崎郁斗
野外炊飯でもよく作るイメージがあるかも。
(まさかこんな合宿が行われるとは、と心の中で文句を言いながらも、どうにか一日目のテストまでは終了。数学はどちらかといえば得意分野に入るので、テストの結果もそれほど落ち込まずに済みそうだ、と。数学漬けの一日を終えた生徒達はどこか明るい様子で、少し遅めにやってきた宴会場は賑わっていた。その為、多くの席が埋まっている状態で、空いている席を探すのも大変そうだ、と考え、先に席をとってから食事をとりに来る事にしようと空いている席を探して宴会場の中を歩きだす。空いている席を探している最中の事、耳に届いた金属音。音の方を見れば、床にフォークが落ちており、咄嗟に其方へと歩み寄ればしゃがんでそれを拾い上げようと。)…大丈夫?まだ食べている途中だった?(フォークを片手に顔をあげれば軽く首を傾げ。)
七瀬環
あ、飯ごうでごはん炊くやつですね。よく焦がしました…。
(椅子から立ち上がると見知らぬ人が落ちたフォークを拾ってくれていた。その事実に驚きから目を丸くするが、次第に慌てた様子でしゃがむ彼の視線に合わせるように屈む。眉の下がった申し訳なさげな表情を浮かべながら、)わ、すみません…!ちょっと余所見してて。あー…、大丈夫……とは言えないかも…。さすがにスプーンでは食べられないし。(カレーと同様に半分程度残っているサラダを見遣っては苦笑いを零す。カトラリー類は食器が並ぶテーブルに置かれているから、面倒だがもう一度取りに行くしかなさそうだ。)あの、ありがとうございました。…あ、もしかしてこれから夜ごはんですか?(交換に行くべく、フォークを手にする相手へ自分の手を差し出して。トレーや食器を持っていない彼の姿から夕飯はこれからか、もう終えたのだろうかと首を傾げつつ「よかったらついでに何か持って来ますよ。」と声を掛けよう。)
神崎郁斗
上手く炊くのにもコツがいるのかも…。
(此方の視線に合わすかの様にしゃがんで申し訳なさそうな表情を浮かべる彼女に、軽く首を横に振れば、安心してもらうべく笑顔を浮かべ。)気にしなくて大丈夫だから。物を落としちゃう事って誰にでもあるだろうしね。……ああ、結構残ってるね、サラダはやっぱりフォークじゃないと、スプーンだと食べにくいし。(立ち上がればトレイの上に置かれた半分程残ったサラダを見て、苦笑を。)いえいえ、どう致しまして。…ああ、今は席探していたところで。……え?いや、それは何だか申し訳ないから、自分で行くし、ついでにフォークもとってこようかな、って思ってたんだけど…。(差し出す彼女の手に軽く首を傾げつつ、その意図が分かれば幾度か首を横に振ってから、「…どうします?」なんて彼女へと問いかけ。)
七瀬環
ちゃんと炊けたらおいしいおこげになる筈なんですけどね〜。
…そうですね。落としたのがお茶じゃなくてフォークでよかったと思うことにします。床も汚さずに済んだし。(迷惑を掛けてしまっただろうかと不安げに彼を窺うも、其処に浮かぶ笑顔を見てはようやく安堵した様子で肩の力を抜いた。つられるように立ち上がるものの、差し出した手に金属の感触はない。不思議そうな顔で自分の手を見つめるが、)……えっ。いやいや、それこそ私の方が申し訳ないっていうか、むしろお礼を兼ねて私が取りに行くべきだと思ってたんですけ、ど、……うーーーん…。(まさかの申し出に驚きと焦りを隠せないまますぐさま断ろうと口を開いたけれど、このままでは彼の夕食の時間が減るばかりである。それこそ申し訳なくて連ねる言葉は段々尻すぼみになり――少しの間の後、遠慮がちに小さく頷いた。)えーっと…、じゃあお言葉に甘えてお願いしてもいいでしょうか…。その代わりと言ってはアレですけど、席は取っておくので…!(差し出していた手を引っ込めてぺこりと頭を下げる。向かい側の空席を指差しながら、せめて席の確保くらいはと。)
神崎郁斗
その加減が難しいところなんでしょうね…、火加減の調整とか。
お茶とかだと服も濡れちゃうし、床も濡れちゃうしで大変な事になりそうだしね。良かったよ。(彼女の安心した様子を見れば、此方も安心した様にフォーク片手に笑みを浮かべて。)いやいや、俺もどうせあっち行くから気にしないで良いのに、だから、そんなに申し訳がらないでよ。(彼女の言葉には首を軽く横に振って、気にしないでと。そして、彼女が小さく頷いたのを確認すれば、)ああ、了解。じゃあ、行ってくるよ。…あ、ありがとう、助かる。(彼女が指さした先、空いた席を見ると笑顔を浮かべてから軽くお辞儀をして。そのまま食事が並ぶテーブルの方へと足を向けて。まずは食事を選ぼうとテーブル前を行ったり来たり。そうして選んだ食事はオムライスとサラダ。それと飲み物として水を一杯、最後にフォークふたつとスプーンひとつ、トレイの上に乗せると彼女が待つ席まで戻って行こう。席に到着すれば「お待たせしました。」と一声かけてから空いている椅子へと腰かけ、トレイの上にフォークをひとつ差し出し。)