食堂

食べたい物ってなかなか決められないもんだよな。

(お昼休みとなり、仲良くなったクラスメイトを誘ってみたが本日彼女は彼氏と約束をしていた様子。けれど彼女は簑島が加わることを気にしておらず、寧ろ歓迎してくれて三人で食べようと提案してくるのだが、さすがにその中に加わるのはお邪魔だろうと思うわけで。何より二人の恋人雰囲気に自分が耐えられない気がしたので、相手が気分を害しないよう遠まわしにやんわりと遠慮し、明日にしようと約束して食堂へ一人で来てみた。今回は初めて…という事もありどんなメニューがあるのか楽しみで自然と心が弾んでしまう。)うーん、困った。どれも美味しそうで…選べない。いっそ全部にしようか…ってさすがにアタシの胃袋底なしじゃないしな(一人呟きながら食券売り場の前で顎に手を当て思案顔でメニューを見て―)

そうですよねー。迷う楽しみもなくはないんですけどねー。

(珍しく寝坊をした西野は朝コンビニに寄る時間もなかった為に久しぶりに学食へ。学食が嫌いなわけではなくよく一緒に昼食を摂る友人弁当派だったり、相談事を受けるには食堂は不向きというだけなのだが。ともあれ今日は一人の昼食。手早く食べれそうなものを食べて教室へ戻るのも悪くないが、滅多にない機会なので昼休みが終わるまでこの喧噪の中でゆっくりと過ごそうか――なんて考えながら食券売り場の前へ。と、何やら自分の前で女生徒が悩んでいる様子。聞こえてしまった呟きに彼女に見えないようにくすりと笑みを零せばお節介にも声をかけようか。)どれも美味しいから困るんですよねー。でも今日の僕はオムライスの気分ですー。悩んでるならシェアしますかー?(と普通初対面の相手に言うような言葉ではないのだろうが、その辺りの事がすっぽり頭から抜けているようである。)

迷いすぎてお昼終わったら笑えないけど(笑)

(後ろから掛けられた声に振り返ればそこにいたのは初対面の男性。相手の困るの発言に同意するように数回頷き返して。彼の提案は簑島にとって物凄くありがたい事だ。白い歯を見せるようににっと笑って)それなら他のメニューも食べられるし、一人より誰かと食べた方が楽しいし、うん、一石二鳥だな。是非お願いするよ兄さん。(初対面でも異性でも全く気にする様子なしの簑島。無論遠慮もしない。彼が良いのであればそのご厚意に甘えようではないか。相手が拒否しなければ彼の右手を握り上下に降って少し乱暴な握手で喜びを伝えよう。もし、手を避けられたとしても簑島は全く気にせず笑ってみせるだろう。初対面で馴れ馴れしくされれば有り得る行動だと思うから。)んじゃ、兄さんのオムライスの他に後二品くらいなら食べられそうだからそれもシェアしようぜ。(OK?と指でOKサインを作り相手に訪ねてみて、OKが貰えたなら残り二品のメニューを決めようか。)

それは困りますねー。直感に頼るしかないんですかね。

(普通断られても仕方ないだろう提案だったが、数度頷き返してくれた相手、西野も嬉しかったようでこちらもにこにこと笑顔を返して。)そうですねー。僕も色々食べたいですし、知り合いも見当たらないんで一人で食べようかと思ってましたけど、やっぱり誰かとの方が楽しいですからねー。良かったです。(手を握られればその勢いに少々驚いたものの表情崩さずに握り返し、離されればOKサインも同じように返そう。)はい。あと二品かぁ…迷いますね。オムライスに定食だときっと少し多すぎますよね。単品が無難かなぁ。えっと、肉と魚どっちが好きですか?それと少しあっさりめのなんてどうでしょう?(こてりと首を傾げてそう問うて。「食べるの好きなんですかー?」なんて続けてみるのか。)

それか毎日のメニューを先に決めておくか、だよな。

(快い返事と返されたOKサインに笑顔のままありがとな、とお礼を伝えた簑島。聞かれた質問には間髪いれずに肉と答えつつ、相手の提案に合いそうなメニューを探し始め、)じゃあ……生姜焼きとラーメンサラダ!……って全部アタシが決めたらダメだよな。肉はアタシ意見でいくとして、もう一つのあっさりメニューは兄さんが決めてよ。(代金は自分が両方払うからと付け足して伝えて二品のうちの一つを彼にお任せすることに決めると、相手に進めるようにどうぞ?の意味で手を前に出した。)そういえば、いつまでも兄さん呼びってのもどうかなと思うしさ、名前聞いてもいい?アタシは2年の簑島奈都。よろしくな。(後々になると聞きそびれそうなのでタイミングを逃す前にと思い、ニッっと明るい笑みを見せて相手に訪ねた。先に名乗ったのは礼儀として。)

1月分くらいのローテンション表でも作りますかー?

(間髪入れずに返ってきた答えにくすくすと笑いを堪えられずに。内心は可愛らしい人だなぁ、なんて思っているのだが恐らく彼女には伝わらないだろう。)じゃあ、先ずはオムライスと生姜焼きは決まりとして、(と言いながらさりげなく彼女と立ち位置を換わる様にして食券売り場の前へ。口ではどうしようかと言いながらも流れるように財布を取り出し慣れた様子で券売機でオムライス、生姜焼き、ラーメンサラダのボタンを押し1000円札を入れて。)ごめんなさい、500円玉ありますかー?(顔だけ彼女の方を向いてそう問うた。)1年の西野輝ですー。簑島奈都さん…もしかして光くんのお姉さんですか?ノート、いつも見てますよー。(へらりと表情崩して「あ、何て呼べば良いですか?」なんて付け足した。)

お、それいいね。んじゃ兄さん宜しく(にっこり)

(アタシ面白い事言ったっけ?――彼の笑っている理由がわからず頭の中にハテナマークが飛び交う。無論彼の考えもわかるはずもない。メニューを選んでいるかと思えば即食券売り場へ移動した相手。選ぶの早いなぁと思いボタンを押すのを見ていると、ラーメンサラダまで押しているではないか。あれ?選んだ?ちゃんと選んだのか?それアタシが言ったやつなんだけど。――再び蓑島の頭に浮かぶハテナマーク。が考えた結果、彼も食べたかったのだろうという事で納得。彼の問いに頷いて返事を返し、500円玉を手渡す。)ん?兄さん光の友達だったのか。そうだよ、アタシは簑島光の姉。うちの弟が大変お世話になっております。(最初はいつもの蓑島だったのが、途中丁寧口調に変わり深々とお辞儀をしてみせる。顔を上げた後、なーんてな、と口にして悪戯っぽい笑みを見せた。)アタシは何でもいいぜ。兄さんの呼びたいように。こっちは輝って呼ばせてもらおうかな。他の呼び名で希望があればそっちに変更するけど。(弟と同じ「ひかる」な為、名前で呼ぶと弟がもう一人増えた気がして何だか面白い。向こうの弟に比べたら背も高いし落ち着きもあるけど…なんて思いながらつい足元から頭上まで観察するように彼を見てしまっていた。)

頑張りますー。けど、奈都さんも少しは意見だしてくださいねー。

(どうやら彼女の頭にはハテナマークが浮かんでいるらしい…と気付いてしまう事は意図している訳ではないので許してほしいな、なんて。)不思議そうな顔してどうかしました?(なんとなくその理由が解るような気もするが、間違っていたら失礼だろうと問うてみて。――500円玉を渡されればそれを機械へ。出てきた食券を取ったらくるりと彼女の方を振り向くのか。)友達と言ってもノートの中でだけで、実際に会ったことがないのが残念なんですけどねー。(お辞儀されればそれを返して。彼女の悪戯っぽい笑みには微笑返し。)じゃあ、奈都さんと呼ばせてもらいますねー。僕はそれで構いませんけど、光くんと混乱しません?(こてりと首を傾げてそう問うて。と、彼女が自分を見ている事に気づき一度ぱちりと瞬きすれば「どうかしましたかー?」と。)僕行ってくるんで、奈都さん席取っておいてもらっていいですかー?あ、あと飲み物要るなら言ってください。(にっこりと笑みを向けて―。)

あいよー。頭使うの苦手なんだけどな、程々に頑張るよ。

いや、何で笑ってたのかな、と。(理由を考えた所で簑島には永遠にわからない。だから諦めて思考を変えようとした矢先の問いかけ。聞き出す気はなかったが教えてくれるのならと不思議そうな表情のまま答えて。)そっか。会った時は仲良くしてやってよ。ちょっとお馬鹿な子だけどな。(けらっと笑いながら弟のことを冗談めかして茶化してみる。が、仲良くして欲しい気持ちは姉としての本音。真面目な雰囲気はどうも苦手でつい茶化しを入れてしまうのだ。呼び方の話になった時、考えていなかったことを指摘され数回の瞬き後、視線は天を仰いで)そう言われてみれば混乱しそうな気もするし……案外混乱しなさそうな感じもする……とはいえよっこみたく、「キラリン」みたいな呼び方はアタシらしくないしなぁ。なんか呼んで欲しい呼び方とかある?(彼が名前で呼んでくれてるのだから苗字呼びは避けたい気持ち。腕を組んで考え込むも結果浮かばないまま。なので彼に聞くのが一番早いと尋ねる始末。その後も、普通に敬称付ければ混乱しないか?と独り言のように小声で呟きながら考え中。見ていたことに対し聞かれると、「背ぇ高いなと思って」と素直に返す。誰と比べていたかは弟の為に伏せておいたけれど。――彼に注文した品を全て持たせるのは悪いと思い、自分も行くと言おうとしたが次々と食堂に入ってくる生徒の数を確認すれば席の確保は早々にしておいた方が良さそうだと判断。)何だか全部任せてごめん、ありがとな。アタシはお茶でお願いするよ。(笑みを返せばくるりと背を向けて空いている席を探しに歩いて行く。窓側が空いていたのでそこをキープ。座って窓から見える青い空をボーっと眺めながら彼が来るのを静かに待っていよう。)

お願いしますー。奈都さんは身体動かす方が好きなんですか?

いえ、奈都さんは可愛らしい方だなぁ…と思いまして。それでです。(ふわりと微笑んで。ふざけている訳ではなく本心からそう言っているのが伝わる様にと。)勿論です。明るくて話してて楽しそうな方だって感じるので、会うの楽しみなんですよ。それに同じ「ひかる」同士仲良くしたいですからねー。(くすりと笑ってそんなことを付け足して。前半真面目に言ってみたものの、最後は茶化したようにいう相手に合わせてみたらしい。)うーん…輝、輝くん、輝ちゃん、後は苗字。この辺りが殆どなのでよっこちゃんと光くん位なんですよね、他の呼び方するのって。(なので自分でも思い浮かばないらしい。呟く彼女の声を聞きながら自分でも考えはじめ…たのだが、自身がニックネームで人を呼ぶことが滅多にない西野には全く思い浮かばなかったらしく。)ごめんなさい、僕も思いつかないです。混乱したらまた考えませんか?(少し眉を顰め困ったような顔、自分が言い出したにも関わらずこんな結末に詫びを。)そうですか?僕平均位だと思ってましたけど…奈都さんと5p位しか変わらないんじゃないですか?(見た感じ自分との差はそれくらいであろう、女性の中では少し高めの身長だと思われる彼女に言われて不思議そうに首を傾げて。――彼女と別れて自動販売機でお茶を買った後にカウンターへ。タイミングが良かったようで、注文量の割にはあまり時間がかからずに品が出てきて。器用に2つのトレイを持ってぐるりと食堂を見渡し彼女を探す。視力が悪い為に少し時間がかかったが、窓際の席に見えた横顔と髪飾りに彼女だろうと判断してその席へ。)お待たせしましたー。(テーブルにトレイを置いて向かいの席へ。数枚の取り皿があるのは彼なりの気遣い。彼女の方へ箸とペットボトルのお茶を置き「奈都さんはどれくらい食べます?」と彼女が食べる分を取り皿へ分けようと。)

うん、そう。アタシは運動好きの体力派。輝は頭脳派か?

へ?(動揺したせいか、間抜けな声と共に手元の財布が地面へと落下――しそうになるのを慌てて空中でキャッチ。)いやいやいや、ちょっと待て!今までの会話のどこに可愛らしい要素があった?(照れより勝るのは驚きのようで、目を丸くして何度も瞬きを繰り返す。可愛いより逞しいと言われる自分の何処にそんな要素が?特にあの会話の流れで何処にそんな場面があったのだろうか。考えてみるけれど無論簑島がわかるわけもないのは先程と同じ。呼び方を考えていると予想もしない詫びが聞こえてきたので顔を向ければ彼の表情は困り顔。)謝ることなんてないって。困らせるつもりはなかったんだよ。アタシの方こそごめんな輝。(謝りながら見せたのが笑顔なのは彼にも笑って欲しかったから。さりげなく呼んだ名前。簑島の中で普通に名前呼びで決めたようだ。「混乱したらひかる一号、二号って言うよ」と笑って言う言葉は本気か冗談か。)いや、アタシとの身長差じゃなくて光との……(思わず言ってしまってから気づいても遅い。心の中で「ごめん光」と一応謝っておこうか。――席へと近づいてきた彼の気配に気づけば窓から彼へと顔を向けて)持ってきてくれてありがと。(笑みを向けてお礼を言って。座った彼が取り皿に分けようとしてくれたので再びお礼を口にして、「半分ずつにしよう」と伝えると、彼の返事を聞く前に自分も取り分けようとトレイから二枚皿をとって、ラーメンサラダを半分ずつお箸で取り分け始めた。彼にしてもらいっぱなしは申し訳ないなと思うから――もし、量が多いと言われたなら自分が多めにもらうし、食べられる自身もある。が一応公平に半分こ。取り分けが終わったなら元気よくいただきまーすと言って食べ始めるのだろう。)

そうですねー。どちらかと言えばですけど

あ、(彼女の手元から財布が落下、受け止めようと手を伸ばしかけたがそれよりも先にキャッチした彼女に小さな拍手を。)お見事ですー。本当、奈都さんはとても素直で可愛らしい方ですねー。(リアクションから察するに、彼女は「可愛い」という言葉に慣れていないのだろう。勿体ないなと思いながらへらへら笑って彼女を見遣るのだ。呼び方の話をしていると、さりげなく呼ばれた名前。向けられた笑顔に彼女の意図を察し、こちらも表情和らげ「どっちが1号かが気になるところですねー。」なんて冗談を返すのだ。)ひかる…?(この場合の「ひかる」は自分ではなく恐らく彼女の弟の方を指すのだろう。自分では割と聡い方だという自負があるが、どうやら今回はわからなかったようで。不思議そうな表情しながらも、なんとなく聞くことは止めておいた。その方が良い気がしたのである。――席へ着けば「ありがと。」との言葉。その言葉に嬉しそうに笑いながら「どういたしましてー。」と。お互いに半分ずつ取り分けた所で食べ始め。)僕、滅多に食堂来ないので毎回迷うんですけど、今日は奈都さんのおかげですんなり決められましたし、色々な種類も食べられたし。ありがとうございます。(なんて小さくぺこりと頭を下げれば、食事の続きを。昼休みが終わるまではまだ時間がある。時折雑談を挟みながらの楽しい昼食の時間を共にし、彼女との親睦を深めようとするのだろうー。)

実は運動も得意ですーとか言ったりする?(笑)

っ…――!?(一度目はなんとか耐えたが二度目は無理だったようで、頬を少しだけ紅潮させる。こういう時はお礼を言うのだろう。頭ではわかっていても言われ慣れていない簑島は言葉が上手く出ない。それでも動揺しているのを隠そうと無理をしてでも平静を装おうのか。彼の冗談には敢えて「さぁ、どっちでしょう?」と意地悪く返して。――呼び方を決めた傍から混乱を招かせてしまったようだ。やっぱり君付けしておいた方良さげだな、と心で思いながら、彼が聞いてきたら、その時は素直に説明する気だった。けれど、彼は何も聞かずで。彼は聡い方で気づいたのかもしれない。それをわかってて尋ねない所は優しい子だな、と口元に小さな笑みを浮かべた。――ひと口食べるとその美味しさに喜色満面になり、次々と手が動いていく。お腹が空いていたせいもあるだろう。食べている途中お礼を言われ、取り敢えず口の中の物を飲み込んでから)いや、お礼を言うのはアタシの方だよ。シェアしてくれてありがとな。美味しいもの色々食べられたし、一緒に居て楽しかったよ。また今度一緒に食べような。(にかっと気さくに笑って「次は迷わないように選ぶからさ」なんて楽しげに言うのだ。――昼休みの間、食事をしながらの他愛もない雑談は続いていき、昼休みが終わる頃にはきっと彼と最初の時より仲良くなれている事であろう。)