図書館

図書室でのんびり読書をする時間…しあわせだなあ。 

(昼休み。昼食を摂ってすぐに向かったのは図書室。読書が好きな雪野は昼休みの時間をいつも本がいっぱいのこの場所で静かに過ごしているのだ。一冊の本を手に向かったのは、室内の奥側に位置する目立たない机の、一番隅っこの席。スカートを抑えながら丁寧に着席すれば、本を開いて読み始めるのだろう。しかし、昨日の夜小テストの勉強をしていたためか寝不足で。今日は読書欲より睡眠欲が勝ってしまい、次第に瞼が重くなれば、上体を起こしたまますやすやとうたたねを――)

小さな幸せだね。君はどんな本が好き?

食事を終え、特にすることもなく手持無沙汰。やらなければならないことも、やりたいこともない今、ふらふらと校舎内を歩いていたが、ふと思いつく。「…こんな時こそ読書かな。」余り頻繁に本を読むタイプではないが、こういう暇な日は読書が一番だと彼は思い、さっそく目的地へ。棚から気になる小説を一冊取り、空いた席へと向かった。)
…おやすみ。
(と、小さく呟く。向かいの席で本を読んでいた少女がうとうとし始めたためだ。その声が彼女の届いたかはわからないが、閉じられた瞼を見てくすっと小さく笑う。はてさて、昼休み終了までに目が覚めるだろうか。本を読みつつも彼女の方を時折垣間見ては様子を窺って。)

色々読みます…恋愛小説とか、ミステリーとか…あなたは?

(意識が眠りへ落ちていく中、おやすみ、と優しい声が聞こえた気がした。その真偽を確かめるほどの気力は雪野には残っておらず、次の瞬間にすやすやと寝息をたてはじめるのか。閉じられた瞳がぱちりと開いたのは、3分ほど経った頃だろうか。時計を見れば、昼休み終了までにはまだ充分余裕はあって。短いながらも眠ったせいか気分はすっきりとしていて、これなら残り時間読書に勤しめる――そう感じたところで、視線を感じた。顔を上げれば、向かいの席の男子生徒と目が合う)
あ、……。
(人見知りの自身は思わずかああ、と頬を赤らめて俯いて。この人はいつから向かいの席にいたのだろうか、ひょっとしたら寝ているところも見られたか、とほのかに羞恥を感じつつも、おずおずと顔を上げれば)
……おはよう、ございます。
(口を突いて出たのはご挨拶。もしかすると、先ほどおやすみと言葉をかけてくれたのは彼ではないだろうかと予想したためであって)

俺はあんまり…児童書とかは読むけど。 

(彼女が眠りに落ちてから約3分、不意に開かれた瞳を見れば、意外と早かったなあ、と内心。また読書を始めるかと思いきや、目が合ってしまう…が、すぐに俯いたのを見れば、少し悪いことをしたと思う。)
ああ、ごめんね。読書の邪魔しちゃったかな。
(赤みを帯びた頬を見て、思わず口元を緩める。彼女が顔をあげる瞬間、また目を合わせるようにまっすぐ見つめて)
おはよう。
(くすくすっと小さく笑いながらの返答。眠りに落ちる瞬間、こちらの言葉にきっと気が付いていたのだろう、と確信する。ますます面白いと、更に笑みを深くして「お早いお目覚めで」と付け足した。)

児童書…なんだか、あなたに似合う気がします。

いえ、大丈夫です…。読書は、いつでもできますから。
(彼の謝罪の言葉を聞けばふるりと首を振りつつ、小さく微笑んで。彼の事を邪魔だなんてちっとも思わなかったし、読書をするのはいつでもできることだ。それよりも自身の興味は自身に声をかけてくれた彼へ向いており、)
はい、……授業に遅れるといけませんから。きっと、わたしの体内時計が働いてくれたんだと思います。
(彼の付け足された言葉にくすりと笑いつつ、冗談めいた言葉を。そして彼の様子をぼんやりとした眼差しで見つめて)
……ええと、…先輩?は、読書をしにいらしたんですか?
(こて、と小首を傾げつつ問いかけてみよう。そのときの目線は、彼の手元にある小説に向いていて)

そう?うーんと…ありがとう?

ああ、ありがとう。読書もいいけど今日は俺のために時間を使ってくれて。
(自らを拒まない相手の反応に、ふっと目を細める。たまには読書を…と思っても、やはり自身はおしゃべりの方があっているようだ、と思いつつ。)
そっか、まじめな子なんだね、じゃあ授業も寝ないでちゃんと聞いてるのかな?(俺の周りには授業に遅れる奴も授業中に居眠りする奴もいるからねー。と、あきれ顔で呟く。)
ああ、あんまり読む方じゃないんだけど、今日はやることがなくてね。ここに良く来る君も、ここで俺のこと見たことないでしょ?
(彼女が頻繁に読書に来るなんて知らないけれども、きっとそうなんだろうな、と適当なことを言って、)
あ、俺は2年生の白鳥春樹。君は?後輩さん?

どういたしまして…、今思うとちょっと微妙な褒め方、でしたね。

それは、わたしこそ…です。あまりしゃべるのが上手じゃないので、ご迷惑おかけするかと思いますが…よろしくおねがいしますね。
(目を細める彼を見て、会話に奥手な自分が相手に失礼なことをしないか懸念があって瞳を伏せるも、最後には顔を上げ、はにかむようにして笑うのか)
はい…先生に怒られるの、怖いですから。…あ、でも5時間目の授業のときや苦手な科目の授業のときは…たまに船をこいでしまいます。
(と、恥ずかしそうに頬を染めつつ答えて。あきれ顔で呟く彼にくすっと笑って、「私のクラスでもそういう人はたくさんいますよ」と答えて)
そうでしたか…お昼休みは長いですからね。…はい、毎日ここに来るのですが……はじめて見たお顔です。
(彼の予想に応えるかのようにこくんと頷いて。自己紹介をしてくれる彼の口から発せられた「しらとり、はるきさん」という名前を復唱してから、名前を訊かれれば)
はい、1年です。雪野梢と言います。…やっぱり、先輩さんだったんですね。落ち着いた物腰だったので…。
(名乗る際はぺこっと頭を下げつつ、自身の予想が当たっていたことを知れば腑に落ちたような顔をしてから)
ええと…なんてお呼びしたら、いいでしょうか?

褒められたって気付くのに、ちょっと時間がかかったかな(くす)

ははは、これはこれはご丁寧に。まあ俺もそんな饒舌じゃないし、どうか気にしないで。
(トークが上手い男の方がもてるんだけどね、と自虐気味に付け足すも、彼女のはにかむような笑みに表情は柔らかく。)
あー、わかるなぁ。俺は古典の授業中気がつくとノートに変な線が書かれてたりする。
(共感するように、うんうんと頷く。こんなに真面目そうな女の子でも眠たくなるのだから、まあ殆どの人が眠くなるのだろう。「頑張っても無理な時ってあるよなあ、仕方ない」とちょっと諦めた様に付け加え。)
へぇ、やっぱり毎日来てるんだ。じゃあ此処の本もうたくさん読んだ?オススメあったら教えてよ、梢ちゃん。
(「あんまり読まない俺でも楽しめるような、簡単なやつを頼むよ」と、くすくすと笑いながら先ほど聞いた名前を早速呼ぶ。)
俺ぜーんぜん落ち着いてないけどね。まあ好きな様に呼んでよ。苗字でも名前でも。あ、あだ名付けてくれてもいいよ?(目線を彼女から逸らし、上へやると、「出来るだけ変なのがいいなあ、面白いから」などと冗談交じりに呟いた。)

じゃあ今度は…もっとわかりやすい褒め言葉、考えます。

ありがとうございます…。そういうもの、なんですか?んん…そうでもないと思います…。先輩は、わたしの話にも優しく耳を傾けてくれますから…。トークが上手いだけが、女の子に好かれる要素じゃないと思いますよ。
(彼の言葉にはこてんと小首を傾げつつそう話し、小さく笑おうか)
そうなんです…。板書を取ろうとしても、なかなか手に力が入らなくて…。…先輩は、古典が苦手なんですか?
(彼の話に相づちを打ってから、話題を広げるように問いかけて。諦めたように呟く彼には「ふふ、…でも先生が可哀想かもしれませんね」と眉を下げて苦笑して)
いえ…入学して間もないので、まだあまり。卒業するまでに全部の本を読むのが目標なんです。…おすすめですか?…それなら…。
(本の話になれば控えめだった口調が少し弾んだものになる。先ほど自身が教えた名前で呼んでもらえれば、意気込みも増すのか。心なしか瞳を輝かせながら席を立てば、「ちょっと待っててくださいね」と一声かけて席を立ち、近くの本棚を物色。そうして一つの本を手に取れば、彼の方へ歩み寄り)
これがおすすめです…。小説なんですが、言い回しがとても読みやすくて…心温まります。
(と、差し出したのは一冊の本。読書慣れしていない彼のことを考えあまり分厚くなく、児童書を読む、と聞いたためそんな雰囲気を匂わせる小説をチョイスした結果、その一冊になって。気に入ってもらえるかな、と最後は不安そうに小首を傾げて)
えっ?……えっと…あだ名ですか…。……ん……、はるるん先輩…?(無難に苗字に先輩で呼ぼうと思っていたため、あだ名呼びの話になれば不意を突かれたように。口元に手を当てて真面目に考え込んだ末、頬を真っ赤にしつつも提案したのはあまりひねりのないニックネーム)

はるるん先輩天才!とかどう?(くすくす)

もし俺が女だったら、顔のイイ男よりも話が面白い男と付き合うからさ。(戯れに小首を傾げる彼女の真似をして、同じ角度に首を傾け)でもそうか…そうだね。聞き上手も魅力的かな?(零れた笑みに、合わせてこちらも微笑んで見せ)
だけど授業が終わると別に眠くなかったりするんだよね。魔法にでもかけられてるみたいにさ。不思議だよなあ。…ああ、ものすごく苦手。まあ、テストの時は大体平均点マイナス10点くらいかな。(あからさまに声のトーンを下げ、伏し目がちに告げ、苦笑する姿を見れば「頑張って話してるのに相手が寝てるのは確かに嫌だよなあ、」と独り言のように呟いた)
あ、そうか。さすがに短期間で読破はできないか。だけど梢ちゃんならその目標達成できそうだね。
(おしとやかな子、という印象を感じていたがやはり興味のある話になると、なんだか明るくなったような気がする。立ち上がって本を探している彼女の様子に、思わず柔らかく微笑みを浮かべる。その笑みは彼女がこちらへ向かう時には消えていたけれども。差し出された本を、両手で受け取れば、不安げな彼女を安心させるように笑んで一言、「ありがとう」と。)
うん、これ、読んでみるよ。ブックエキスパートの梢ちゃんが言うんだからきっと素敵な話なんだろうなあ。(冗談っぽく適当な言葉を使いながら、本へ視線を落とす。)これ、借りていくよ。電車の中とかで読んで…終わったら、感想言うから。その時梢ちゃんの感想も聞かせてよ。(ほら、やっぱり共有した方が楽しいしさあ、と人差し指を立てて付け加え、)
うん。あだ名。………(軽い気持ちで言ったのに、えらく真剣そうに悩んでいるものだから、これは面白いものが見れたなあ、なんてほくそ笑んでいると、顔を赤らめ出てきた言葉に二回まばたき。)はる、るん?(そして復唱。少しの沈黙の後、ふふっと笑って)いいじゃん、はるるん。可愛いし。男のあだ名じゃないけど。(くすくすと茶化すように笑いつつも、「じゃあそれでよろしく」とまんざらでもない様子である)

…あ、…はるるん先輩…天才…です…!

そういうもの…ですか…?…でも、顔よりもずっと、中身の方が大事だっていうのは…わかります(自身と同じ角度に首を傾げる彼を見れば、頬を赤らめて俯き)そうです…、だから、はるるん先輩は魅力的な人です(と、臆面もなくそんな台詞を口にすれば、ふわっと笑って)
あ…それはわかります…!休み時間は、いつも目が冴えてて…、たしかに、先生のお話にはそういう魔法がかかっているのかも…って、先生が聞いたら複雑な想いさせちゃうでしょうか?(ん、)そうなんですか…。でも、誰にでも苦手な科目ってあると思います…!わたしは、物理や生物が苦手ですから…!(と、伏し目がちな彼を見れば一生懸命言葉を紡いで。彼の呟きにはこくんと頷いて、「だからあんまり、寝たくはないんです…」と俯こうか)
はい…!果てしない目標ですが…大好きな本の事ですから、頑張ろうって思えるんです…!
(と、浮かべる笑顔は年相応に幼いもので。自身が持ってきた本を受け取り、お礼の言葉まで告げてくれる彼に安心したように微笑めば、)
わ…そう言われると、気に入っていただけなかったときのことを考えて怖くなります…(彼の言葉には緊張気味に俯くも、次の言葉には嬉しそうに顔を上げて)はい…!そのときがすごく楽しみです…っ(ふわ、と笑えば「はるるん先輩は、わたしの本友達、ですね?」と無邪気に告げて)
気に入っていただけたみたいで…うれしいです。それじゃあ、これからははるるん先輩って呼びます…。あらためてよろしくお願いします、はるるん先輩…(彼の反応が決して悪いものではないとわかれば、ほっとした様子で微笑み、ぺこっと小さくお辞儀をした。そこで、ふと壁にかかった時計を見れば)
あ…そろそろ、お昼休みも終わりますね。はるるん先輩、その本を貸し出ししたあと…もしよかったら途中まで一緒に戻りませんか…?(と、彼の手にある本へ視線を向けつつ、おずおずとお誘いの言葉を。「ご都合が悪かったら、大丈夫ですから…」と、無理強いはしないつもりで)

んんんー?その「あ」は何かなあ(にこにこ)

俺の場合は、だけどね。あーでも、やっぱり梢ちゃんも中身派なんだね。、ああ顔がイイ人は生まれた時から色々と美味しい思いはしていそうだけどね。(俯いた姿にくすっと小さく笑んで、だけれども続く言葉にはぱちぱちと大きく瞬き)俺が?…ふふふ、ありがとう。(彼女の柔らかい笑みと、その台詞には少し恥ずかしそうに目を伏せて)
あはは、やっぱり皆そうだよな。…そうだね。どうやったら集中して授業を受けてくれるんだろうって悩んでるかも?(悩ましげな表情を浮かべながらうーん、と頷き)まあー、ね。たまになんでもできる凄い人もいるけど、大体何かしらあるよな。ああ、女の子は物理とか生物が苦手な子が多いかも。(なんだか慰めてもらってるみたいだなあ、なんて呟いては頼りなく笑って)
さすが。またイイ本があったら紹介してね。
あはは、梢ちゃんが俺のために選んでくれた本だし、きっと大丈夫だよ。(少し表情が堅くなったかな、と思ったのも束の間、すぐに嬉しそうに表情を変えた彼女にふっと小さく笑って)
うん、梢ちゃんは俺の初めての本友達だ。
(ぺこり、小さくお辞儀をされれば流されるようにこちらも小さく会釈して、)
あ、…もうそんなに時間たった?まさかここで新しく友達が出来るなんて思わなかったな。
(誘いの言葉には「もちろん」と一つ返事。「梢ちゃんもその本借りるの?」と問いかけて。貸し出しを済ませれば二人並んで教室へと向かおうか――)