(星空が綺麗だ。ただそれだけ――)

(なんとなく。本当に何となくこの場に来た。「こんな道を1時間も歩くのは体型維持には良いかもしれない」なんて後付けの理由を。晴れた空を見上げればそこには満天の星。)…綺麗。(なんてぽつりと漏らして。)暫し空を見上げていたが首が少々疲れたようで視線落とし、誰も見ていないだろうと足元にあった小さな石を軽く蹴飛ばしてみた。その行動も特に考えなしのなんとなくで。幸いにも石は誰にも当たらなかったようだ。行動を起こしたのは自分なのにその事にほっと胸をなで下ろした。)


星を見て綺麗って思える事、大事なんじゃないかと思うよ。

(放課後、地域探索同好会所属のクラスメイトに頼まれ、天体望遠鏡を星を見る丘まで運ぶことになった簑島。彼は予定が入り帰宅しなければならず、たまたま出会った簑島にお願いした、と言うことなのだ。頼まれるのは嫌ではないし大した難しいことでもない、二つ返事で快く承諾。それが、つい一時間半前の事。ただ、普通こんな重たい荷物運びを女性に頼むものだろうかという疑問もあるが、、か弱いより逞しいが合うであろう自分なら仕方ない事なのかもしれない。そんな事を考えていると丘に到着。体力に自信のあるけれど、望遠鏡を担いで一時間歩くのは思っていた以上にきつかったのか額から汗が流れ落ちてくる。同好会の会長に持ってきた望遠鏡を渡し役目を終えたわけだが、このまま帰るのは勿体無い気がした。なんせ星空がこんなに綺麗なのだから。見るのにいい場所はいないだろうかと、辺りを見回しつつ歩いていると足元に小石が転がってきて。転がってきた先には一人の女性の姿。その小石を拾い上げて彼女の傍へと。)レディ、お一人ですか?この小石が私の元に転がってきたのも何かの縁。一緒に星を見ませんか?(掌の小石を見せながら英国紳士風を気取り声も低くして格好良く声をかけてみる。初対面ではあるけれど、ちょっとした蓑島のお茶目である。言い終わった後、なーんてな、と素に戻りケラリと楽しげに笑うのだ。)


綺麗なものは綺麗って認めないと可哀想だものね。

(蹴飛ばした小石の行く先を見ていると一人の少女の傍で止まった。当たりはしなかったもののどうやら自分が蹴ったことは気付かれてしまったらしい。小石拾い上げて近づいてくる彼女に怒られるのかと思いきや、レディ、などという言葉。声も低めに聞こえるのはわざとだろうか?元々だろうか?少々戸惑いつつ様子を探っていると、一転して明るい笑い声が。)うん、一人。だから喜んで。(なんて、安心したのかくすりと笑った後にそう言って。と、不意に彼女の額がきらりと光った気がした。よく見るとどうやら汗をかいているようだ。学園からここまで1時間、人によってはそうなるのも不思議ではない。持っていた鞄からタオルを取り出せば差し出して。)とりあえず汗拭いたら?(その様子はなんとも素っ気ないものだが、相手が女性という事もあり初対面ながら後藤なりに気を遣っているらしい。)


それもあるけど、綺麗って思えなくなったら何か寂しいっしょ。

(イエスの返事を貰えたならゆっくりと彼女の傍らへ歩いていく。「たくさん星があるなぁ」と呟いて星を眺めている中、何かが簑島に差し出された。目を向けると彼女の手には一枚のタオル。何のために差し出されたのかわからずきょとんとした顔でタオルと相手を交互に見ていたが、彼女の言葉に納得。確かに汗が流れっぱなしで拭っていなかった。ニッっと笑って)気使いありがとう。遠慮なく借りるな。(タオルは鞄の中で今は持っていなかった為素直に受け取り、額の汗を拭った。)アタシは簑島奈都。2年生さ。タオルは洗って返すから。ついうっかり持ってくるの忘れちまって。(自分とは対照的に女性らしい彼女が相手だからか、がさつな自分の行動に少しだけ気恥ずかしくなり、指で頬を掻いた。)


言われてみれば。綺麗って思える感情って大事にしたい。

(タオルが彼女の手に渡れば少しばかり表情緩めて。)後藤ゆりあ。私も2年。別にそのままでも大丈夫だけど…でも、そう言ってくれるならお言葉に甘えようかな。返すのいつでも良いから。(名前の後に続いた言葉、別にそのままで構わないのに…と思いつつもそれは強く押し出すものではないだろうと彼女の言葉に従って。)…私、なんとなく来ただけなんだけど、簑島さんは?星が好きだから見たかったとかそういう感じ?(と無難な話題を切り出して。あまり話題選びが得意じゃないことは自覚しているし、いつも自分が相手のペースに乗れないと中々会話が弾まない後藤。彼女が自分とは逆のタイプならそれはありがたいし、似たようなタイプならただ一緒に星を眺めるのも良いかもしれない。一人より二人…なんて。)


だからゆりあの心は綺麗だよ……ってナンパみたいだな(笑)

そっか。同じ学年だったんだな。じゃあ、ゆりあって呼ばせもらう。(気さくな笑みと共に彼女の愛称を勝手に決めてしまう。が、もし嫌だと言われたなら普通に苗字呼び、又はどう呼んでいいか尋ねるのだろう。少々馴れ馴れしい部分があるのは簑島の性格ゆえか。タオルは一旦ポケットへ入れて)ん?アタシはクラスメイトに頼まれて天体望遠鏡をここまで運んで来たんだ。で、星が綺麗だからこのまま帰るのは勿体無いかなーって思ってフラフラしてゆりあを見つけたってとこ。星は嫌いじゃないけれど、実は来る予定はなかったんだよな。(そういうゆりあは?と彼女の質問と同じ事を尋ねて。まだ短い時間しか居ないが彼女は自分とは正反対な静かな性格なのだろう。あまり喋りすぎると星を見るのを邪魔してしまうかもしれない、なんて少しだけ気にしてしまうのは星空の下のせいだろうか。)なぁ、ゆりあは星座ってわかる?(星を見上げながらぽつりと)


それを言うなら簑島さんこそ…って私のもナンパになるのかしら?

うん。どーぞ。(と少し表情崩して。基本的に自分の事だと理解できる呼び名であればどう呼ばれようとあまり気にしない後藤、それに自分の方が先に簑島さんと呼んでいるのだし。)天体望遠鏡って大きいわよね?それ運んで来たの?(小さく目を見開いてそんなことを。もしかしたら彼女は力があるのかもしれないが、自分の知っている天体望遠鏡はそれなりに大きさも重さもありそうだった。あの汗はだからか、なんて。そんな彼女に「お疲れ様、」と。)私も似たようなものかな。元々来る予定はなかったんだけどなんとなく思い立って、って感じ。で、空見てるのちょっと疲れちゃって足元見てたら…そこからは簑島さんも知ってるでしょ?(自分が蹴った小石を思い出してくすりと悪戯な笑みを。)ううん。子供の頃は星座の授業好きだった様な気がするけど、今は全然覚えてない。(彼女が星を見上げながらそう問うてくるので、こちらも視線は空に向けながらそう答え。)…でも、一人で見るより人と話しながら見る方が楽しい。ありがと。(彼女が来る前よりも楽しくなってきた天体観測に、そんな言葉を。)


じゃあ二人でナンパしあってるってことになるのか?(笑)

そ。雛学からここまで担いで運んできた。(少し驚いてる風の彼女の横で笑いながらも大したことないというように「楽勝楽勝」とさらりと答えてしまうのは女性としては良くないだろうか。体力はあっても女らしさはない発言でもそれが簑島なのだからしょうがない。労いには嬉しそうに「ありがとう」と。彼女の笑いに釣られて小さくクスッと零して)そっか。ゆりあも来る予定なかったんだ。ならさ、アタシらは星に導かれてここに来たのかもしれないな。(夜空をゆっくりと眺めていると不思議に穏やかな気持ちになっていく。静かにぽつりと零れた言葉に言い終わってから、「なんかキザなセリフかも」と照れくさくなり茶化して笑うのは自分らしくないと思ったから。)授業聞いてもわからないよな。道に迷った時は北極星は北にあるから目印にしろ…なんて言われた事があるけれど、その北極星が見つけられないんだよ!って思う。(彼女との他愛ない会話が楽しくてテンションが上がってしまう簑島。天体観測が煩くなってしまっただろうか。彼女が静かに眺めたいなら邪魔をしているのでは……ふっとそんな思いが頭を過ぎり彼女の様子をちらりと覗って見れば、紡ぎ出された思いに今度は簑島が目を見開く番。)え?……あ、いや。アタシは特に何もしてないし、どっちかといえば煩かったと思うんだけれど……(お礼を言われるのは予想外で戸惑い少ししどろもどろになるも、そんな自分の姿がおかかしくなりクスクスっと笑い出してしまい)お礼を言われるとは思わなかった。アタシの方こそ楽しい時間をありがとな。(はにかんだような笑顔で簑島もお礼の言葉を伝えて。――楽しい時間は過ぎ、天体観測も終了時刻を向かえ生徒達の丘を降りて行く姿がちらほらと目に写れば)アタシ達も帰ろっか。お送りいたしますゆりあお嬢様。(最初の時のように紳士風の口調に表情は楽しげにウィンクをしてみせて。丘を降りて行く生徒達と共に一緒に雑談をしながら帰るのだろう――)


でも、今回のナンパは成功だったみたいね。

楽勝って…(呆れているのではなくその言葉に驚いているのだが、彼女にそれは伝わるだろうか?後藤自身、己の悪い癖はよく承知している「呆れてるとかじゃなくて驚いただけ。誤解させてたらごめん。」なんて付け足した。)今日はゆっくりお風呂入った方が良いと思う、きっと疲れも取れるし。(とお節介にもアドバイスを。ゆったりと流れる時間に二人取り残されているような感覚を覚えながら聴く彼女の声。不意に声の調子が変わった様子に彼女の心中を察しながらも言葉は紡ぎだされて。)キザっていうよりも綺麗な表現だと思うけど…私には真似できない。(言葉後半は緩く首を振りながら、柔らかな表情浮かべ彼女の方を見遣った。)それよく言うよね。でも、北極星見つけられなかったら迷子のままだし、これを機にちょっと勉強してみる?(くすりと冗談めかしてそんなことを。――騒がしいのも度を越さなければ好きだし、後藤とて親しい友人と盛り上がっているときは煩いと注意を受けることもしばしば。つまりは彼女の明るい雰囲気は好きだという事。)煩くない。人見知りを盾にするのは良くないってわかってるんだけど、中々直せなくて。誤解させちゃってたらごめんなさい、本当に簑島さんと話せて楽しい。(本心を真面目に言ってみたものの照れは隠せない。染まった頬の赤みは夜空が消してくれているけれど、表情で伝わってしまっているだろう。――彼女と出逢ってからあっという間だった。掛けられた言葉に周囲を見れば学園方向へ向かう人々。向けられたウィンクに今度は戸惑うことなく。すました様子で楽しげに言葉を返そうか。)ええ、じゃあとりあえず学園までお願いするわ。(どこまで送ってもらうかは彼女の帰宅方向次第。別れの時まで雑談交わしながら――)