みおるん!集合だ!

(憂鬱な期末テストの最終日、3科目だけだったので午前で終了した。補習の常連である松原の出来栄えなんてたかが知れているが、今回は割と検討した方…だと思う。肝試しをしようという話から、試験が終わったら遊園地と約束していたが、目的地を話していないという適当っぷりだった。とりあえず校門集合なんてぐるちゃを送信したものの、なんと財布を自宅に忘れるという痛恨のミス。仕方なく自宅に取りに帰ってから着崩した制服姿のまま花鶏駅へと向かった。足早に商店街を歩きながら『そろそろ着くぜ!どの辺にいる?』とぐるちゃを送信して。――無事に合流することが出来たら電車に乗り込むこととしよう。行先は、怖すぎないお化け屋敷がある遊園地。部活の先輩に教えてもらったそこは、乗り換えなしで行ける場所だ。)

(憂鬱なテスト期間が続く。果てしなく続くだけに篠井の表情は日に日に暗くなっていく。テスト終了のチャイムと共に机にうつ伏せてしまうのは毎度お馴染みな光景で。やりきった感を感じながらポケットから取り出したスマホに視線をうつす。そして先日連絡を取り合っていた同級生からのぐるちゃに慌てて起き上がるのだ。机の中身をリュックにうつしながら、放課後どこかよっていこうと話しかけてくるクラスメイトに「先約なの〜」と片手で申し訳なさそうにお辞儀をすれば急いで校門へ向かう…はずだった。)こらこら、松原くんおっちょこちょいすぎる。(目的の人物からの返信に思わずふはりと小さく吹いてしまい。そのまま校門に向かう足はトイレへUターン。少しばかりメイクを直して駅へ向かおうと決めたならば、少しの余裕を感じながら。ゆるりとした足取りで花鶏駅へ向えば、見覚えのある容姿を視界にうつした。「やっほー。松原くん」そう嬉しそうに口角を緩めながら声をかけると同時にきっと彼からのぐるちゃでスマホが振動した筈。「今日はよろしくおねがいします!」とぺこりと小さくお辞儀をしながら、方向音痴な少女は彼についていくつもりだ。)松原くんテストどうだったー?(行きの電車の中で遠慮なしに地雷を踏む彼女の言葉は気を許している証拠であって。そして返答によっては今日半日のテンションが決まる。)

(彼女から声を掛けられて、視線を定めたのはぐるちゃを送信してすぐのことだった。「おッ、みおるんお疲れ!ッつーか、ごめんな!」急きょ待ち合わせ場所を変更したことに謝罪を挟みつつ、小さくお辞儀をされれば「おう、こちらこそ!」とニカッと笑いかけて。駅の改札を抜けて電車の中での会話は、テスト明けの高校生がするにはごく自然なものだ。しかしそれが松原にとっては痛い所。知っててその話題を選ぶものだから、全く手に負えないものである。軽く噴き出しては)ふはッ、すげー直球だな!どうだったッて、大体わかるだろー!けどアレだぜ、今回は全部の答案埋めたからな!こりゃ補習回避できるかもな!そンで、みおるんはどーよ?(補習の常連でテストはいつも壊滅的、その基準でいけば随分マシな方である。少しだけ自信があるようで、以前のような悲壮感は漂っていなかった。逆に問うてみては彼女の返答を待つとしよう。もっとも補習になるか否か、という低レベルな基準では無いのだろうけれど。―電車で数駅、「此処で降りるぜ」と目的地最寄りの駅で告げては開くドアをくぐり。突き抜けるように青い空の下、土地勘は無い為スマホのアプリに案内されるがまま歩を進めて辿り着いた遊園地。チケットを2枚買い求めて入場すれば、観覧車やらジェットコースターやら、大きなアトラクションが目をひく。平日なのであまり混んでいる様子は無かった。)迷わず着けて良かったぜー!おーッし、とりあえず食べ歩きでもすッか?(今日の目的であるお化け屋敷やジェットコースターに乗りたいのはやまやまだが、時刻は丁度お昼時。所々に出ている屋台を指差して、先ずは腹ごしらえの提案を。)

大丈夫だよ〜。松原君らしいなーって思ったけど。(ふふ、と小さく意地悪く笑って見せるのは彼に気にするなという証拠。それよりも、楽しみにしていた事が叶うのには変わりないのだ。−吹きだす彼に思わず瞳を動かしながら、そして自然と頬が綻んでしまう。)何でも直球っていうし。分からないよ、ほら奇跡っていつおきるか分からないじゃん。「寝ている間に気づいたら答案用紙全部うまってるじゃん!」とかあるかもしれないし。…ないか。(おちゃらけながらそんな発言をしてみせても、すぐに否定。答案を埋めたという彼に「すごーい!!」と何故か上から目線で声をかけてしまうのも同級生ならではなのかもしれない。)うーんわたしも松原くんと同じでがんばって埋めようとした、かなぁ…。でもやっぱり文章の読解力ないから大変だった。(両手をひらひらと振りながら、双眼を緩めつつ。ーー降りるという言葉を聞くと同時に彼についていく両足の歩幅はいつもよりはスピードアップ。少し髪の間から落ちる汗を拭いながら、彼の隣を歩く。目の前に見えてくる観覧車などの建物に近づくたびに興奮する気持ちは抑えられなくなっていくのだ。入口から中へ入るとより彼女の瞳の輝きは増して。早くいこうと言わんばかり彼を見つめ。)食べ歩きしますっ。お腹ぺこぺこだ〜。(両手を叩いて彼に大賛成の同意を示し。近くのお店をのぞき見しながら、)松原くん何たべたい?てか嫌いなものあるの?(そう問いかけた。しかし視線は近くのポップコーン屋へ一直線。)

そりゃそーだけどよ、奇跡が起こるッつったって、それがわかンのはテストが戻ってくる時じゃね?…ッて、そっちかよ!寝てる間に答案用紙埋めンのは流石にねーよ!(彼女自身否定してはいるけれど、松原もそれに被せツッコミを入れるように否定しては明るく笑って「俺だってやりゃできるンだよ!」と上から目線の一言には気づいていない模様。読解力が無いという言葉には不思議そうに首を傾げつつ「みおるんッて国語苦手なのか?スゲェ意外だな。」と呟いて。―電車を降り遊園地へ向かう途中、彼女の歩幅を意識しなかったわけではないが、この暑さもなんのその、逞しいくらいにずんずん歩くので余程楽しみにしていたのだろう、松原も気を使ったりせずに歩幅を変えずに歩き。早く遊びたいという気持ちもあるが、ひとまず提案した腹ごしらえに明るく賛同してもらえれば松原も上機嫌だ。)だよなァ、俺もスゲー腹減ってる!(そう言いながら自分の腹部を擦っておどけて見せて。)嫌いなモンは特にねーよ、そういうみおるんは何が食べたい……ッて、もしかしてポップコーン?それだけだと足りねーから、隣のホットドッグも買わねェ?(彼女の視線がポップコーン屋に釘付けだったので、思わず笑ってしまって。勿論彼女が食べたいというなら賛成だが、隣接したホットドッグ屋に行くよう誘いつつも、まずはポップコーンを買おうと店の方へと歩み進め。)

松原くんのナイスつっこみだ。(けらけらと、白い歯が丸見えな程の楽しそうな声が周りに響く。)うん国語とか苦手。漢字は暗号にしか見えないし、古文なんて何語って思っちゃう。(意外なんて言われたことがなかったため、一瞬きょとんと首を傾げ。直後、じっと貴方の双眼を眺めながら、「松原くんは体育がだいすきってイメージだよね。」と言葉を重ねながらふんわりと笑った。)…松原くんってエスパー?わたしの食べたいもの分かるなんて天才だ。勿論ホットドッグもほしいです!(自分の視線を見られていたなんて気づく筈もなく、尊敬の眼差しで彼を見つめながら驚いた口元は小さく開いたまま。続く言葉には嬉しそうに賛成する声が重なる。自分のほしいものを優先してくれる彼の姿に優しさを感じながら、ふと背中を見ながら頬が緩まる。)1つ買って半分こしようよ。ホットドッグは2つでいっか!(店員を目の前にしながら、彼の隣に立って。指で数を示しながら、そう提案を。どちらにせよ、満足のいく食料調達には変わりなかったはず。目的のものを買えれば「ちょっとだけベンチ座ろうよ」と近くのベンチを指さした。食べたい気持ちが優先され、足は少し速足に。)わたし松原くんに聞きたい事があったんだ。