(夏休みが始まるその週の月曜日、つまりはクラスメイトの誕生日翌日。いつもの調子でギリギリの時間に悠々登校した黛は、やっぱりいつもの調子で着席すると早々に机に突っ伏してしまう。ただそれは居眠りではない。彼にしては珍しい…かもしれない、考え事の時間だった。鞄の中のそれを、いつ渡そうか、なんて。当日が日曜日だった為に、今日お祝いする人が多いみたいで、休み時間には「誕生日おめでとう」なんて女子達がプレゼント片手に彼女へ声を掛けているようだった。その波に便乗するのも悪くない気はしたが、今回はとりあえずステイ。時期を見送っている内に結局放課後になってしまったが。)篠井さん?たんじょーびおめでとー。(ホームルームを終えれば、彼女が友達から声を掛けられるより早く席へ向かい、小さなラッピングバッグを差し出しながら、へにゃっと笑って。)ちょい久しぶりに、一緒に帰らん?(プレゼントを渡すことに成功したら、そんな提案を。先客が有るなら「そっかー、じゃーまたねー」と笑って別れることになるだろう。OKを貰えたなら帰り道で)そーいやさ、夏休みの最後になんかバイト?みたいなのあるらしーじゃん。篠井さんそれ参加する?近くに美味しいかき氷屋さんあるんだってさー。バレンタインのお返しもまだだし、篠井さんも行くなら奢るけどー?(と、来月の話題を振ってみることに。別れ道まで、こんな調子で終始のほほんと緩い会話が続いただろう。ちなみに、プレゼントはオーガニック素材のボディミスト。甘いだけでない、シトラスの爽やかな香りが夏生まれの彼女に合うと思って。)

(誕生日の翌日。いつも通りの時間に登校する彼女。ただ友人たちが「おめでとう」と言葉をかけてくれる。そんな特別な日。ちょっぴり擽ったい気持ちを感じながら、周りへのお礼は忘れない。しかし授業は普通にあるもので。そんな変わりない内容の1日もやっと終わり、下校時間。帰ろうかと思いリュックに荷物を入れている時に、かけられる声に視線を向けては、ふわりと笑顔を重ねて。)わーわー、黛くんありがとう。…プレゼントもありがとうございますー。(言葉と共に差し出された其れをじっくり眺めながら、再び彼へと笑顔を向けて。ただ純粋に嬉しい気持ちが重なった。)あ、帰る。ぜひぜひ、おねがいします。(慌ててリュックに荷物を詰め込み肩へとひっかけ、彼と共に玄関へ向かう。ゆるりとした歩幅について行きながら、)バイト参加するよ。って黛くんも参加するの?めんどくさーいとか言ってそうなイメージだった。…うそ今のなし。わーい、かき氷うれしい。黛くんとかき氷楽しみにがんばるよー。(慌てて告げた彼のイメージの言葉を訂正したが間に合うかどうか。かき氷という単語を聞けばテンションがあがるのは間違いない。「あ、練乳つけていい?」なんていつも通りのわがままも忘れない。帰り道まで何のかき氷を食べようかなど、かき氷での話題は続くのだろう。ーー家に着くと丁寧に彼からもらったプレゼントに手をかけて。少し手につけてみる其れをくんくんと嗅ぎながら、彼がどんな表情で選んでいたのか想像するとまたにやけてしまう篠井の姿があった筈。)