(1限目と2限目の休み時間に「今日の昼休みは教室にいること!」と本日誕生日を迎えた後輩にメッセージを送りつける。勘の良い彼ならばある程度は察しただろうか。4限目終了のチャイムが鳴るとすぐに教室を後にして、向かうは1−3の教室。外から中を覗き込んで、お目当ての彼を見つけたならばにんまりと笑って)輝、誕生日おめでと。(と、まずは祝いの言葉を述べようか。もし彼に触れることが叶ったならば、全力のおふざけで「大きくなったねえ」とふわふわ頭をわっしゃわっしゃと撫でくりまわしたことだろう。)あ、これプレゼントね。こんな時期だから早めに食べちゃって。(はい、と手渡したのは無地の紙袋。中にはラッピングされた色とりどりなカップケーキがいくつかと金色の毛並みを持つバースデーベアが鎮座しているはず。カップケーキはイチオシの専門店で購入したものなので味は保証できるだろう。そして、バースデーベアの丸っこい手にはミニカードが持たされていて「HAPPY BIRTHDAY HIKARU ! 」とある。)じゃ、私はこれから購買に走るから。(目的を果たしたならば長居は無用。うっかり昼ご飯忘れちゃってさ、と笑いながら付け足して、ひらりと手を振りながら教室を出ていく。彼が気付いたかどうかは分からないけれども、御門のゆるい一つ結びの根元にはゴールドのリボンが飾られていたことだろう。)

(授業間の休み時間。勿論授業の準備もするけれど、友人との雑談も小さな楽しみだったり。そんな時間にポケットの中で震えたスマホ、今日という日の意味を考えればあまり不思議な事ではなくて、友人に断りを入れて内容を確認。送信者が誰かを知れば、無意識に口角上がって。「お待ちしていますー。」と察したことを遠回しに伝えるような返信をすれば、ポケットにスマホを仕舞おう。友人に「輝、なんか楽しそうじゃね?」と言われれば「わかりますかー?」とにんまり。――さて、約束の昼休みまで時間を飛ばそう。昼休み開始のチャイムが鳴っても大人しく自席に着いて彼女を待っていれば、直ぐに現れた彼女に緩く手を振って迎え入れ。)ありがとうございますー。無事に今年も大きくなりましたー。(と頭を撫でる彼女にされるがままに、おふざけにも返す。そしてプレゼント渡されたならば嬉しそうにそれを受け取って。)嬉しいですー。じゃあ、今日のデザートに頂きますねぇ。(彼女の言葉からそれが食べ物だと知れば、そう言って。)はい、じゃあまた。気を付けて行ってらっしゃい。(購買に向かうという彼女をそんな言葉で見送れば、貰った紙袋と弁当を持って友人の輪の中へ。紙袋を開けてバースデーベアを取り出せば、己の髪色とそっくりのクマに「似てます?」と友人へ問うてみたりして。――その後の西野がずっと楽しげだったのは、彼女からのプレゼントが嬉しかったからか、はたまた彼女の髪飾りに気付いたからなのか。それは本人のみぞ知る。)