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(7月22日、朝の始業前。ひょこっ、と5組の教室に顔を出した雪野は、室内を見回して彼女を探す。無事見つけることができたなら、とことこと歩み寄り)…未桜ちゃん、あの…おはよう。…えっとね、昨日は、お誕生日おめでとう!(ふわ、とはにかみつつ祝福の言葉をかけて。優しい眼差しで彼女を見つめつつ、「これ…」と差し出したのは、茶色い紙袋)…よかったら、受け取ってくれると嬉しいな。……これからもよろしくね、未桜ちゃん(にへ、と微笑めば「じゃあ、またね」と彼女の元を去る。――紙袋の中に入っているのは、一冊の文庫本と、ネコのぬいぐるみ。本には紙のカバーが巻かれていて、中身はミステリー小説。前に”おすすめの本を持っていく”という約束をしてからずっと考えて、ようやく決めた本だった。学園ミステリーで読みやすく、読後感が爽やかで温かくなるものをチョイスしてみた。ネコのぬいぐるみは、手のひらにちょんっと乗るくらい小さな白猫で。一緒に添えられたカードには、【未桜ちゃん、お誕生日おめでとう。素敵な一年になりますように】と優しい丁寧な字で書かれている。)
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(登園してきたばかりの彼女は未だ眠そうな目をこすりながら座席へとつく。クラスはちらほら生徒も集まり、大勢の声が響いているそんな朝。ふと自分の名前が耳にはいれば、嬉しそうに視線をむける。その声は自分を癒してくれる、そんな雰囲気をもっている相手だからーー)梢ちゃんおはよう〜。・・わわ、ありがとうございます!うれしい。(自分の誕生日を覚えていてくれたこと、そして手渡されたものに温かさを感じながらゆるりと頬を緩め。再び視線を彼女へうつし、)ありがとう梢ちゃん。大事に頂きます。(ぺこりと小さくお辞儀をしながら、再度彼女を優しく見つめ。彼女が教室を立ち去ったならば、その後ろ姿に手を振り返そう。ーー「わー、覚えていてくれたんだ。」以前の約束を彼女が覚えていてくれたことへの喜びと感謝の気持ちを心に留めながら大事そうにその小説を手にとって。ネコのぬいぐるみは先ほどの彼女を思い浮かばせられるもので十分だった。どちらも大切に両手で包みながら、鞄にしまい込み。きっと、家に帰宅するなり白猫とともに小説にを読みふける篠井の姿があるだろう。)
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