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(5月7日。連休明けの朝、少し早めの時間帯に教室へ。彼女がいないタイミングを見計らい、いそいそと彼女の席へ。直接渡してもなんら不都合はないのだけど、彼女が数週間前にしてくれた小さなサプライズを思い出し、自身もそうしようかと思っていたのだ。そうして、彼女の席に置いたのは薄茶色の袋。藤色のリボンが十字になるように結ばれた中には、ハンドクリームとメッセージカードが入っている。ハンドクリームはUV対策もできるもので、シロツメクサとすずらんの香りがするものだ。彼女の名前から、雪野のイメージではすずらんが一番浮かんだのだ。それだけでなく彼女の誕生花でもあるらしいことがわかり、これを贈りたいと強く思ったのだ。メッセージカードは白地に春の花がいくつかあしらわれたもの。【宮元さん、お誕生日おめでとう。このあいだは、素敵な贈り物をありがとう。大切にするね(*^^*)私からも、お誕生日プレゼントを贈らせてください。これからもよろしくお願いします 雪野】と、丸みを帯びた丁寧な字で書かれている。――無事に任務を終えた雪野は、そわそわしながらも自分の席へ。喜んでくれたらいいな。心からそう思いながら、朝の読書タイムに移るのだった)
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(連休明けの5月7日も宮元は何時もと変わらず花壇の世話をするために早めに登校し、直接部室へと向かう。朝の部活を終えても一般生徒の登校時間よりも少し早く、教室も人がまばらで。クラスメイトと挨拶を交わしながら自分の席へ向かえば机の上に置かれている薄茶色の袋に気づき、ぱちりと瞬いて。休み前に忘れ物をしたのだろうか、誰かの忘れものだろうか、と記憶を辿り思い出したのが誕生日の日にきょうのことばでお祝いを言ってくれたクラスメイトの少女の事。彼女の席を見遣れば彼女は静かに読書中で、失礼します、と心の中で断りながらも藤色のリボンを解き中を見れば入っていたメッセージカード。目を通せばやはり彼女で読みながら口元が緩んでくる。メッセージカードと共に入っていたハンドクリームをよくよく見ればシロツメクサとすずらんで、二つに共通するのは『幸せ』のメッセージのような気がして、優しい彼女の心遣いにふわりと笑みが零れた。自分の誕生花でもあるすずらんのハンドクリームを早速使えば大好きなすずらんの優しい香りに嬉しくなってくる。ゆっくりと彼女の席に近づき、座っている彼女の視線より下になるようにスカートを抑えながら傍にしゃがんで、)…雪野さん、読書中お邪魔してすみません。プレゼント、ありがとうございます。早速すずらんのハンドクリームを使わせて貰ったのですがとてもいい香りですし、しっとりしていい感じです。部活で水を使うことが多いので、とても助かります。(にこりと嬉しそうに謝辞を述べ「読書中に失礼しました。今度ゆっくりとお話し出来たらと思いますので、その時は宜しくお願いしますね。」とちゃっかりお願い事をして、それではまた、とふわりと微笑み自席に戻って行った。それからシロツメクサのハンドクリームは机の中の常備品として、すずらんのハンドクリームはポケットの中に常に持ち歩き、無くなるまで大切に使われることだろう。)
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