(3月14日、ホワイトデーといえば1年の中でもお金の消費が特に激しいイベントだと思う。この日のためにバイトのシフトを増やしてもらったくらいだ。先月貰ったチョコには本命なんて1つもなかったが、義理の数はそこそこの松原は、この日大きめの手提げ袋を持って登校した。相手は主にクラスの女子と女子バスケ部の部員なので、午前中にすんなりとお返しできた。)あとはー…うっし、後藤センパイだけだな。(昼休み、食堂で昼食を終えて教室に戻ったら、最後に残った1つを手に階段を下りて2‐3へ。無造作にドアを開けると、彼女に気付いてもらうべく)あっ、いたいた。後藤センパーイ!(と、ブンブン手を振ってから駆け寄ろう。声が大きかったのでクラス中注目を集めたが気にしない、というより気付いていない。)先月はごちそーさまでした!後藤センパイの女子力最強ッすね!これお返しッす!(嬉しそうに笑いながら差出したのは赤い箱。中には色鮮やかなてまり飴が詰められた瓶が入っている。お返しが彼女の手へ渡ったなら、頭を下げてから「じゃー俺はこれで!」と自教室へ戻っていくだろう。)
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(昼休み、教室で友人と昼食を摂っていた後藤。お喋りに花を咲かせながらの昼食はのんびりと進むものである。教室内に元気な声が響いたとき、例に漏れず後藤もまだ食べ終えてはいなかった。けれども己の名が呼ばれたから箸を置いて声の方を見遣り。声の主が元気な後輩であると気づけば口元無意識に笑み浮かぶ。手を振る彼に軽く手を挙げて迎え入れよう。)ありがと。別に気にしなくて良かったのに…でも、折角だから貰う。(ぐるちゃでも伝えたが、お返しなど気にせずとも良かったのに。しかしそれでは彼の気が済まないのだろう。そう悟れば素直に赤い箱を受け取って。頭を下げる彼、その頭に手を伸ばしてといつかのように軽く撫でる。そこには妙に満足気な後藤がいることだろう。そして彼を見送る。彼の姿が消えてすぐ「どー言う関係?」と友人に突っ込まれるが「女王様とワンコ」と答え。その言葉で何時ぞやの動画上映を思い出した友人は納得の表情で――。)
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