志貴さんはいますかねぇ?

(昼休みも半分ほど過ぎた頃、昼食を食べ終えた西野は購買へ。バニラアイスとチョコレートアイスをを買って、2年生の教室が並ぶ廊下へ。事前調査(という名の知人に聞いただけ)にて彼女が2組だという事は把握済み、目的の教室へやってきたのなら顔見知りの女子生徒に「御門志貴さんの席はどこですかー?」と問うて。)こんにちは。自転車の鍵の持ち主が、アイスを献上しに来ましたー。(とへらりと笑ってビニール袋を掲げてみせよう。「バニラと一応チョコも買ってきたんですが、どっちがお好みですか?」と勝手に前の席を借りて座り、中身を取り出して。彼女さえ良ければ選ばれなかった方はここで一緒に食べていくつもりである。そして彼女がアイスを選んでくれたのなら、)1-3の西野輝と申しますー。この度はありがとうございました。(と遅ればせながら自己紹介を。)

(昼休みの過ごし方は日によってまちまちではあるが、本日は教室待機である。というのも、先日拾った自転車のカギの持ち主がアイスの献上にやって来るとのこと。恐らくお礼ということだろうが、気を遣わせてしまったみたいで申し訳なく思うところはある。それでも、献上品が好物ということで、喜びが勝っているのが現状だ。早々に弁当をかきこんで、クラスメイトから上手くせしめた週刊少年雑誌を自席でパラパラめくりながら、今か今かと待ちわびていたら)……ん?ああ、あんたが。こんにちは。別に良かったのに、律儀って言われない?ま、貰えるものは貰うけど。(かけられた声に顔をあげると、そこには一人の男子生徒。雑誌を横に押しやれば、ふはと吹き出すように笑って「ありがと、バニラ食べる」と受け取ろうとするのだろう。)オーケー。西野輝ね。輝でいい?どういたしまして。……にしても、よくこのクラスだって分かったね。(どうやら彼は後輩らしい。改めて前の席に座る彼と視線を合わすようにすれば、ひとつ疑問を投げかけてみて。)

(雑誌を捲っている様子に若しかしたら迷惑だったかも?と一瞬思ったが、どうやら杞憂だったようだ。へらりと笑ってバニラアイスと売店で貰ったスプーンを渡そう。)あははっ、実は言われますー。はい、どうぞ。(律義と言われれば、そうあろうとしているので否定はしない。それこそが、西野が学園内で上手く人間関係を築いている理由でもあるのだから。)勿論ですー。僕も勝手に志貴さんとお呼びしてますし。あ、もし嫌だったら言ってくださいねー?…あぁ。僕、学年問わず知り合いは多い方で。2年生なのはノートから解ってたので、2年生の知り合いにお名前出したらクラスまではすぐに解りましたよー?(とこてり首傾げ。「聞いたのが4組の子だったので、流石に席までは解りませんでしたけど。」と笑った。が、はたと気づけば)勝手にすみません。気に障ったなら明日もアイス献上するので許してください。(半分冗談だけれど、半分は本気で。)

(彼に抱いた印象はどうやら間違っていなかったらしい。「やっぱり」としたり顔で頷きつつ、アイスとスプーンを受け取る。)いいや、好きに呼んでいい。……へぇ、そういうことか。知り合いが多いってのは便利だね。やっぱ部活繋がりとかで多いの?(アイスの蓋を外してさくりとスプーンを突き刺しながら、笑って首を振り好きにしてくれと返す。学年を問わず知り合いが多いと聞けば、一番に浮かんだのは部活動での繋がりだ。)ふは、席まで知ってるのは私の友達かクラスの子だろうね。……こらこら、早合点しない。私、文句あったら一番に言うし。そりゃもうボロクソに言うから安心して?つまり、気に障ったとか思ってないから。それに献上してくれるなら誕生日とかでお願い。(恐らく冗談のように聞こえるけれども、一応伝えてはおく。されど、誕生日に貰うならばやぶさかではないと口角をあげつつ、アイスを口に運ぶ。)んー、美味い!購買となめたらいけない美味さだ。

ありがとうございますー。…いえ、僕は帰宅部なので。なんというか…人が人を呼んで知り合いが増えた感じですー。確か最初は友人の相談に乗ったのが切欠だったかと。後は、同じ中学の人も結構いるんですよ。(問われれば緩く首を振って。自転車で通える距離に自宅がある西野は出身中学も学園の近くだ。それに加え、中学時代から恋愛とファッションの相談役として学内でその地位を確立していた西野の知人は日に日に増える一方なのである。)そういうタイプの方は有難いですねー。僕は好きです。誕生日…志貴さんの誕生日はいつですかー?(冗談めかしていたけれど、それはきっと本当の事だろう。そう思いつつ、こちらも冗談に聞こえるように本音を。そして話の流れで彼女の誕生日を聞いてしまおう。)そうですねぇ。僕、購買のアイス初めて食べましたけど、これはまた買いたくなりますー。(チョコレートアイスを口に運びながら。)

……ってことは、あんたは話を聞くのが上手いんだ。はー、なるほど。あれだ、知り合いは女が多いんじゃないの?男より話したがりだし。(予想がはずれてあれっと首を傾げるも、話を聞いていればそういうことかと納得。そして、にやにやと更なる憶測でものを言ってみて。)そう?自重しろってよく言われる。ま、ありがと。誕生日は七夕。覚えやすいっしょ。輝はいつ?(友人や家族から苦言をもらうことしばしば。気を付けようと思うことはあれど、ポンと忘れてしまうのが常である。にひ、と笑って己の誕生日を答えた後で、聞き返してみよう。)初めて!?輝、あんたそれは損してる。とーっても損してる。夏に出てるバーアイスはどれも最高だから!あえておすすめを言うなら、フルーツが入ってるやつ。あの値段で売っていいのって思うくらい美味しい。今度買ってご……ああっ、私のアイス!?(初めて食べたという言葉に衝撃を受け、思わずぽろっと手元のカップを落としてしまう。ころんと机に横たわったそれに気づいたのは、頬を紅潮させて購買アイスの魅力を力説した後で)……ちょっとこぼれちゃた。も、もったいない……。(ちょうどスプーンで掬おうとしていた一口分が、机にダイビングしたようである。慌ててカップを置き直して、恨めし気に落ちたアイスを見つめ。)

上手いかどうかは自分では解りかねますが…人の話を聞くのは嫌いではないですからねー。はい、正解ですー。(パチパチと小さく手を叩いて。男子生徒がいないわけではないが、スマホのアドレス帳の割合が男女1対3なのは事実だから。)程度はあるでしょうけど、個人的には意見がはっきりしてる方は素敵だと思いますよ?カッコいいというか、凛としているので。(様々なタイプの友人知人がいるし、皆それぞれ良い面も悪い面もあると思っている。比べるようなことはしたくないけれど、彼女のようなタイプは魅力的だと西野は思うのだ。)食べたいな、と思いつつタイミング逃してたんですよねー。学校だと買ってすぐ食べなきゃってなるじゃないですか。それで。へぇ…フルーツ入り良いですね。美味しそ、………(熱弁をにこにことしながら聞く。と彼女の手元からカップが零れ落ち、西野の相槌も途切れ彼女と机を交互に見遣る。恨めしげにも悲しそうにも見える彼女、自分のチョコレートアイスを一口掬えば彼女の口元へ。)志貴さん、はい。(西野自身に抵抗はないけれど、もし彼女が抵抗を示すようであればふざけたように笑ってその手を引っ込め、代わりに反対の手でポケットから出したティッシュを差し出すだろう。)

ああ、やっぱり。やるね、世の男たちが羨むやつじゃん。嫉妬深い彼女でもできたら苦労しそうだけど。ね、彼女いる?(当たる憶測に満足げに頷いて、好奇心のままに問いかける。どこか面白そうに瞳がきらめいていることだろう。)……ふぅん。そういうので褒められたことってあんまりないから……なんか新鮮。あんたは褒めるのも上手ね。(水泳をしている関係で体格などを褒められたことはあるが、性格面ではあまり覚えがない。慣れないそれは、少しむずがゆくて一瞬だけ視線があらぬ方向へ。それを咳払いで誤魔化しつつ「……で、輝の誕生日いつなわけ?私の聞いといて自分は教えないとか無しだから」と催促を。)……ん。(未練がましく落ちたアイスを見つめていたら、口元へ差し出されたのはチョコアイス。御門にとって友人とアイスをシェアすることは珍しいことではない。つまり、その感覚で反射的に口を開けて食べさせてもらったわけで。)チョコ、おいしい。ありが……うん?ちょっと待って。今……あれ?(口に広がるチョコ味に機嫌を上昇させ、相好を崩したところで、あることに気付く。怪訝そうな面持ちで鞄から取り出したティッシュで机を拭きながら、先程の出来事を整理してみれば)つい食べちゃったけど、良かった?や、私は平気なんだけど。間接ちゅー。(彼から差し出されたということは、構わないということだろうけども、もしかしたら冗談だった可能性もある。ほいほいと食いついて良かったのだろうかと、神妙にうかがってみるのだが。)

そうですかねぇ?「輝君はおともだち!」ですよ、皆さん。まぁ、僕はそれで満足しているので構いませんが……!!ふふっ、残念ながら。(西野自身"女好き"であることは否定しないが、"男友達"の立場で満足している事も影響してか恋人と呼べる相手はいない。彼女がいるかと尋ねられれば、普段そういうような目で見られる事がない為に驚いて目を丸く。しかし直ぐに微笑んで否定をするのだ。)何事も見方によって変わったりしますし、そもそも褒めるべき点が全くない人なんていないと思うんですよ、僕。(逸れた視線と急な咳払い、彼女が照れていると感じれば、彼女の視界の外でどこか満足気な表情浮かべて。「実は僕も7月なんですー。7月23日です。」とここは誤魔化すところではないから素直に誕生を告げた。差し出したチョコレートアイス、彼女が口にすれば何事もなかったかのようにまたカップからアイスを掬って己の口に運び。)僕は抵抗ない方なんで大丈夫ですよー。嫌だったら最初からそんな事しませんし、美味しいものはシェアしてなんぼだと思ってますから。それに、志貴さんの気分が下がったままなのも嫌ですし。(間接ちゅー、と言われればくすくすと笑って。確かにそれは間違いではないけれど、そういう風に意識することがない西野にとっては意外な反応だったようだ。)

世の中には、女と知り合いになるのに苦労する男もいるってことさ。うちの兄貴みたいにね。へぇ、いないんだ。できるように頑張れ、って応援いる?(残念を通り越して可哀そうな兄弟を思い浮かべ、憂うように息をついて。彼女がいないと聞けば、ふざけ半分で激励は必要かと口角をあげる。)……その見方を変えるってのは意外と難しいもんよ。自力じゃ気付けないこともある。だから、輝みたいに言ってくれる人は有難い存在かもね。(彼の満足気な様子に気付くことはなく、再び視線を合わせれば和らいだ表情を浮かべる。告げられた誕生日には「お、夏生まれ仲間発見。覚えとく」と嬉しそうに目を細めて。)そう?ならいい。まあ、美味しいものは分けるのは同意するけど……あんたこの短時間で私の扱い上手くなりすぎ。(気にならないのならそれはそれでと納得。しかし、彼の行為が善意からということは分かっていても、手のひらで良いようにされたような気もして何となく悔しい。むうと若干ぶすくれて、己のアイスをつついていたのだけど)輝、私のバニラ食べる?バニラも美味しいよ。(美味しいものは分け合う。その精神に倣うべく、スプーンで掬ったバニラアイスを差し出してみよう。)

志貴さんのお兄さんは僕と違ってシャイなんですね。きっと彼女さんが出来れば一途なんじゃないかと。いえ、大丈夫ですー。(彼女の兄について全く知らないにも関わらず、僅かなヒントからそんな風に想像してみて。今のところ彼女の必要性は感じていないし、好きな子がいるわけでもない。ふふ、と笑って激励は辞退しよう。)確かに。自分では中々難しかったりしますねぇ…じゃあ、必要になったらいつでも呼んでください。(へらりと笑顔を浮かべる西野。言葉が冗談か本気か、その表情で余計に解りにくくなっていれば…と思う。「ありがとうございますー。」と誕生日の件には返して「志貴さんは何味のアイスが一番お好きなんですか?」と非常に解りやすい内偵を。)そうですかー?だとしたら、僕と志貴さんは相性が良いのかもしれませんねぇ。(彼女の扱いが上手いかどうかは西野には解らないけれど。彼女がそう言うならもしかしたらそうなのかもしれない。それはそれで悪い気はしないと内心。そしてバニラアイス差し出されれば、嬉しそうに笑ってから)ありがとうございますー。(とぱくり。そして「ん、バニラもなかなかですー。」なんて。)

はは、輝の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいには。一途ね……その彼女が出来るまでが一苦労ってもんよ。そう?わかった。(その通り、と笑って頷く。それから、少々呆れたように兄が一途さを発揮できるのはいつになるのやらと小さく肩を竦めて。奨励を辞退されれば、あっさりと引き下がるのだろう。)へぇ、必要じゃないときは呼んでも来てくれないってこと?それは悲しいね。私はもっと輝と仲良くなりたいのに。(わざとらしく瞳を伏せて、溜息ひとつ。そういうことを言っているとは思ってもないくせに、質の悪い揚げ足取りをしたのは意図が分かりにくい彼への仕返しみたいなもの。好きなアイスと聞かれれば即答で「ストロベリー。楽しみにしているよ、輝くん」といい笑顔で返して。)んん、それは嬉しい……かも?初めて話すわりにあんたといるのは悪くない。カギ拾って良かったと思う。(アイスも献上されたしね、と嬉しそうに笑う。偶然の産物にしてはいい繋がりをもてたと思うのだ。差し出したアイスが無事彼の胃に収まったなら、満足気に目を細め「でしょ!」と己もアイスをぱくついて。)……ごちそうさま。美味しかったよ、ありがと。次、私移動なんだけど途中まで一緒に行く?寄るとこあるなら別にいいけど。(最後の一口を食べ終えて、ご機嫌で手を合わす。改めて礼を述べてから時間を確認すれば、そろそろ昼休みも終わる時間である。ごそごそと次の授業の準備をしつつ、聞いてみるのだが。)

これからが勝負の時なんですよ、きっと。(彼女の兄は、きっとこれから。そう本気で思う西野は肩竦める彼女とは対照的に笑顔浮かべるのだ。)そんな。志貴さんに呼んでいただければいつでも現れますよー?呼んでもらえただけで必要って思ってもらえたって勝手に誤解しておくので。僕ももっと仲良くなりたいですしね。(瞳伏せる彼女にへらへらとしながらそんな事を。それが彼女なりの仕返しらしいことには気づいているのである。「ストロベリーですね、覚えておきますねぇ。」と頭のメモ帳に彼女の好みをしっかりと書き記して。)そう思ってもらえると僕も嬉しいですー。(それは西野かて同じこと、鍵を拾ってもらったのが彼女で良かったと思うのだ。そしてこちらもアイスを食べ終えれば、つられたように時計見て。そろそろ時間であることを確認すれば、ゴミを片付けて立ち上がる。)一緒に行きますー。僕は教室に戻るだけですので。(と彼女の準備が終わったのなら、共に教室を出て。別れる場所まで談笑は続くのだろう。)

…だといいね。(なんだかんだ言っても結局は心配なのである。呆れたような仕草を正し、案じるようにわずかに眉を下げて笑ったのは、希望を示してくれた彼への謝意だ。)そう。なら、遠慮なく。……ああ、でも気分じゃないときは来なくていい。私の相手する元気があればってことで。(彼の言葉を聞くや否や、わざとらしい憂いは霧散する。刹那、探るように数度瞬くが直ぐに笑みを浮かべる。真意はどうあれ一先ず着地点は見つけたということだろう。)袖振り合うも他生の縁、って言うしね。(だから大事にしようと思う。授業の準備を終えて、ゴミも片付けたならば)オーケー。じゃ、行こう。(午後からの授業は眠気との戦いでもあるが、今日はマシなような予感がする。それは好物のおかげか、はたまた。彼と別れた後の足取りは軽いものだっただろう。)