(授業間の休み時間、ネイビーのラッピングバックを持った後藤は2-1教室へ。運よく開けっぱなしだった扉から中を覗いて目的の相手がいることを確認すれば、教室内へ。彼の元へ歩いていけば、半ば押し付けるように持っていたラッピングバックを彼に渡して。)あげる。誕生日おめでと。(それだけ言えば、彼の反応を見ずに踵返して自分の教室へ戻っていこう。因みにプレゼントの中身であるが、皮で出来たペンケースと"Haruki.S"と刻印入りのボールペンのセットである。)

(他者に誕生日を教えた憶えは無いが、何処で聞いたのか何時の間にか知れ渡っているものだ。朝からクラスメイトに「おめでとう」と一言賜ったり、コンビニで買ったお菓子やらジュースやらを差し入れて貰ったりしていた。そして授業間の休み時間、普段と例外なく次の授業の準備を終えると隣席の友人と下らない会話を楽しんでいたのだが。解放された扉から、このクラスメイトではない生徒が入って来るのを視界の端で捉える。女子にしては背が高く、すらりとしたまるでモデルの様なあの子を、自身は良く知っている。彼女は真直ぐ此方へ歩いて来るが、敢えて気付いていない振りをしてみよう。きっと彼女は俺の所へ来てくれる。そんな自惚れにも似た思いを抱きながら相変わらず友人と中身の無い会話を続けて行く。そして彼女が自身の元へ来た時には驚く様子など微塵も無く、にっこりと笑って)…ありがとう。(と、素っ気無く渡されたプレゼントを受け取ろう。可愛い子だった、なんて話し相手の友人が言うものだから「君には紹介しないよ」と意地悪を言っては笑い合って。そして間もなく校内に響くチャイムが次の授業の始まりを告げる。)