(週末の原宿駅、すぐに相手を見つける事は出来るのか?)

(誕生日プレゼント、と称して彼と約束をした日。天気は生憎の曇り、雨が降るかもと天気予報は言っていたがそれも夜になってからのようだ。残念な天気に少しばかり憂鬱になるも、気を取り直して前日夜に準備していたバッグに折り畳み傘を忍ばせて。――やってきた原宿駅竹下口。約束の時間まであと5分と言ったところだろうか?少し肌寒かったのでネイビーのリブニット、白地に赤やオレンジの膝下丈の花柄スカート、ベージュのトレンチコートを羽織って。足元は自分の身長を気にしてか、コーラルピンクのぺたんこパンプス。髪は普段通りおろしてメイクもいつものようにナチュラルメイク。白のバッグを片手に持って、駅の出口で彼の姿を探そうか。)

やっぱり休日は凄いなあ…人込みは苦手?

(暖かな日が続いていたが今日は勝手が違う様だ。窓から鈍色の空を眺め小さく溜息一つ。普段休日に友人と出掛ける事があまりないので、それでも楽しみな事に変わりは無いのだが。白のノーカラーシャツにネイビーのコーチジャケット、ベージュのチノパンに白のスニーカーを履いて。財布やスマホはポケットに入れて。手ぶらで家を出た。満員電車に揺られ目的地へ。電車を降りた所で中学時代の旧友と偶々会い、談笑しつつ出口へ向った。彼と別れてから左手首の時計を見ると10時55分。予想通りだが矢張り人が多い。そんな折、見慣れた髪型の後ろ姿を見かけた。背丈を見ても彼女で間違いないだろう…が、後ろから驚かせる様に声を掛けたとして、人違いだったら相当恥ずかしい。それに今日は誕生日プレゼントと云う名目なので、あまり悪戯はしないと決めて居た。)おはよう。ごめん、待たせたかな。(と、正面に回り込んでにこやかに声を掛けた。)

んー…好きではないけど、苦手って程ではないかな。

(駅の出口で通行人の邪魔にならないようにしながらも、周囲をきょろきょろと見渡して。相手は遅刻をするようなタイプではなさそう、というのが後藤の彼に対する印象だ。だからすぐに見つけられる筈…と思っていれば、掛けられた声。後ろからではなく正面からという事に、少しだけ驚いたもののすぐに表情戻して微笑浮かべ。)おはよ。ううん、私も今来たところ。…白鳥くんの事だから、驚かせてくるかと思ったけど違ったわね。(くすりと笑って。そんな事を言えば悪戯好きと思われる彼からどんな反応が返ってくるか…までは考えていないようだ。)まだお昼にはちょっと早いし、少し洋服見ても良い?(横断歩道を渡った先にある竹下通りを見てから彼の顔を再度見て、小首傾げ。)

まあ好きな人はいないよな、余程の変人でもない限り。

(驚かせ様とした訳では無いが其の行動が逆に意外だったらしい。彼女からの意図せぬ反応に思わず数度瞬きを。しかし直ぐに表情が緩んだので此方も微笑み返しつつ。)そう、よかった。…今日はゆりあの為の日だから、そういうことはしないよ?……多分。(とは言ってみたものの、自身が嘘吐きな事は自分で良く解っているので何処まで続くのやら。尤も彼女には其処まで疑われる様な事をしてきた記憶も無いけれど。一応保険の心算で「多分」の一言を小さく添えた。)ん、わかった。じゃあ行こうか。(言うと同時、自身の右手で彼女の左手を取った。人混みで逸れぬ様にと手を繋いだが説明するのも野暮なので敢えて触れず、)その服、良く似合ってる。やっぱり制服とは印象違うなあ。(と、歩きながら雑談を。)

確かに(笑)聞いたことないわ。人込みが好きなんて話。

(驚いてしまった事を謝るのは何だか違う気がして。そんな反応をしてしまったけれど、彼も微笑浮かべてくれたから良しとしよう。しかし、続けられた彼の言葉に笑いを堪えられなかったようで小さく笑いつつ。)多分、なの?……うん、でもありがと。(何だかんだで彼の悪戯は人を不愉快にするようなものではないと知っているから。その後の礼は何に対するものか、なんて教えるつもりははいけれど。)うん。………!!(突然左手を彼に取られて、驚きに言葉も出ず。どうして良いか解らなかったけれど、振りほどく事は出来なかったのかしたくなかったのか。不思議と嫌ではなかったのでそのままで。)そう?ありがと。白鳥くんもシンプルで良いと思うわ。似合ってる。(褒められた事に嬉しそうに少しだけ口元緩めて。)

背の低い人は大変そうだよなあ、埋もれそう。

(お互いに少し驚く形となったが、思い返すと彼女に対しては逢う度に何某か悪戯を仕掛けていた。日頃の行いを考えれば彼女の反応は妥当なのだろう。)そう、多分。実はあんまり自信ない、俺甲斐性ないし?(これ以上言い訳をする心算は無かったが、彼女が小さく笑うから調子に乗って更に御喋りに。御礼には曖昧に笑うだけで何も答えなかったが、彼女の為の日、と言った事に対してだろうと解釈を。過去の付き合いの中で彼女について、気遣いに対して感謝する人、という印象を持っていた。)…あ、迷子防止ね。(拒まれなかった事に若干の安堵を覚えながらも触れた肌から緊張感が伝わって来た様な気がして。小さく笑いながら他意が無い事を説明した心算。ただ、若し逸れた時に迷子になるのは何方なのか自分でも疑問である。)ん、ありがとう。どう、ちゃんと彼氏っぽく見える?(互いの服装の系統が乖離していないので、隣を歩いて違和感は無いと少なからず自信はあるようで、笑いながら尋ねてみた。)

背が低い子って可愛らしいけど、そういう所は本当にね。

自信ないんだ?でも、そういう嘘は吐かないっていうか、そこは正直なところが白鳥くんらしいわよね。(なんて彼の言葉に一人納得して更に笑み零し。取られた手はそのままに。振りほどきはしなかったけれど、握り返すことも出来ず。戸惑っている所に彼の言葉。迷子防止とのそれに他意がない事を知れば、ようやく少しだけ入ってしまっていた肩の力が抜けるのか。)そうね…どうかしら?見えたら面白いわね。(自分たちの姿が周囲からはどう映るのか?なんて事は考えた事がなかった。突然そんな仮定をだされても冗談としか思えなくて、楽しそうに口角上げながらそんな返しを。――そのうちに後藤は気になる店を見つけたようで、軽く繋がれた手を引いて彼にアピール。)ね、ここ見ても良い?

やっぱり背は高い方が良いな。ゆりあはどう思う?

そう云うとこで嘘吐いちゃったらもう誰も俺のこと信じられないしなあ。ありがとう。(此のタイミングでの謝辞は聊か変だが、彼女からの「自分らしい」を褒め言葉と捉えた様。彼女との密過ぎぬ関り合いの中で、自分の事を解って貰えて居る事が純粋に嬉しいと感じたから。握った手、背丈は余り変わらないのに明らかに自分と違う華奢な其れが、自らが発した言葉の後で緩んだ様な気がした。考え過ぎかもしれないが、少し警戒されていたのかも知れない、と内心。)え、面白いんだ?ほーう、これは意外な答えが返ってきた。(少し驚かせようとした心算だったが、想定外に乗って来た事が可笑しくてくつくつと笑い出す。出会ったばかりの頃の彼女ならもっと違う返答をしただろう。)そうだなあ…もし此れをクラスの奴に見られてて、勘違いされたら…俺、超羨ましがられると思う。ゆりあ、結構人気者だからさ。あー、月曜日が楽しみだなあ。(にこにこと楽しそうに歩いていたら手を引かれた。ん?と彼女に顔ごと視線を向けて。わかった、と一言。さてどんな服を選ぶのか、密かに楽しみにしつつ店内へと――)

低くて守りたくなるような子に憧れた事はあるわ(笑)

確かに。そこでも嘘吐かれたら私だって信用できなくなると思うわ。(彼の言葉に可笑しそうにけらけらと笑って。ありがとう、なんて言われるような事を言ったつもりはないが、言われて悪い気はしない。言葉を返す代わりに目元緩めて彼を見て。握られた手。警戒した訳ではなく驚きで肩に力が入っていただけだが、無意識とはいえそれに彼がどう感じるかなんて考える余裕はなかった。迷子防止なら仕方ない、自分と違って彼は原宿の人込みに慣れていなそうだから…なんて考えれば自然と肩の力は抜けて。密過ぎない付き合いではあるが、それ位には彼の事を信用しているし知っている気がしているのだ。)意外?だってそんな風に考えた事なかったし。確かに何も知らない人から見たら、こんな場所で手を繋いでる男女って普通はカップルだと思うだろうなって思うだろうし。でも実際は私たちに今までそんな雰囲気が流れた事なんてなかったでしょう?そう思うとちょっとおかしい。(と笑いこらえながら答えて。彼の事が好きか嫌いか聞かれれば、好きではある。が、それが恋愛感情か否かと問われれば、そのように意識した事がなかった為に否と答える前に笑いが込み上げてくるようで。)勘違いされたとして…羨ましがられるのは私の方じゃない?頭が良くてピアノも弾ける美少年なんだし。背が高くて愛想も良くない女に需要があるとは思えないけど。(人気者と言われれば、不思議そうにそう言って。自身の身長は武器だと思っているし、慣れぬ相手に愛想がない事はもうどうしようもないと思っている。だが異性にモテた例がないのはそれが主な原因だと知っている後藤は、楽しそうな彼の言葉はやはり冗談だと思っているようで。冗談にしては持ち上げるなと不思議だったのである。――店内へ入れば並べられた服を見るだけで手に取ることなくまずは中を一周。その後スカートが並べられているコーナーへ戻ればレモンイエローのレーススカートを手に取って。彼の手をそっと外して身体に当ててみると、ふくらはぎ程の丈のようだ。手を伸ばして同じ形の淡いグリーンの物を取ればまた同じように身体に当ててみて。どうやら色で悩んでいる様子。)

お、それは意外だなあ。スタイル至上主義だと思ってた。

意外だよ。ゆりあのことだから、照れを隠しつつ「そういう冗談はどうかと思う」って冷たくあしらってくるかと思ったんだけど?(到底真似と呼べる様な芸当では無いが声のトーンを上げて、数ヶ月前彼女のバイト先での言葉を其の侭引用した。茶化す様に小さく笑って言うが、彼女の反応が以前と違うならば多少は親密になったのだろうと純粋に嬉しくもある。其処を素直に伝えられない所が瑕瑾だが。)カップルじゃなくても狙ってるのかな?とか思われるだろうな。人混みに乗じて手を繋いであわよくばとか、高校男子なんて結構しょうもないこと考えてるし。(そう言って思い出すのは日常生活での同級生との会話。口では下らないと思いつつも声色は可笑しそうで。)おかしい?そうかなあー…そういう感じになった事は確かに無いな。でもゆりあの事はちゃんと女子として見てるからそこは安心して良いよ。(省みる様な仕草をしたが口を開けば相変わらず楽しそうで。白鳥は彼女に対し友達以上の感情が有るのか、過去に考えた事もあった。明確な解は導き出せなかったが、少なくとも今はこの関係、この距離感に心地良さを感じている所。)いや、そんなこと無い。てゆうかゆりあって意外とにぶちんだよなあ、友達に言われたことない?俺はほら、胸板ぺらぺらで頼り無さそうだから駄目だよ。逆にゆりあの好みを疑われると思う…それはそれで面白そうだけど。(学園内で第三者から白鳥の耳に入る彼女の評価は寧ろ高い方だが、この反応からして毎度の冗談だと思われている事に感付いては居る。それでも良いかと思いながら続けて紡いだのは昔誰かに言われた卑下する言葉。体型は密かなコンプレックスだが所詮話のネタにする程度である。二枚のスカートを当てた彼女を少し引きで見遣り、吟味する様に右手を口許へ。少しの間を開けて、薄緑の其れを控えめに指差し)どっちも春色で似合うな、でも俺はこっちが好き。卵焼きよりもレタス派だから。(始めは何方が似合うか考えていたが、結局判らなかったので好きな色で選んだ模様。)

小学生の頃の話よ(笑)今はこれで良かったと思ってる。

あー…うん、確かに言いそう。(我ながら可愛げがない返答の方が似合うな、なんて思った。だが、元々後藤は一度気を許した相手には甘えるし、冗談も言うし、ふざけてみたりだってするのだ。それを説明する気はないけれど、恐らく彼にはその辺りばれて居るんだろうな…と。彼は聡い人だから。)男子高校生がしょうもない事を考えてるのと同じように女子高生だって大概よ(笑)好きでもない相手の手は振り払うし、頭だって撫でられたくはないわ。(ふふ、と笑って。よく女子は頭を撫でられるのが好きと聞くけれど、それは撫でる相手に好意がある場合だけだ。その辺り、よく男は間違えるらしい…と口に出さない思考は少しだけ飛躍。)そう…それはありがとう、で良いのかしら?私も白鳥くんの事はちゃんと男性だと思っているわよ?(どう返すのが正解か解らなくて、少し悩んだ後に無難な言葉を口にし。そして自分も同じことを彼に返すのだ。今の所彼は大切な友人だ………多分。今はまだ、深くは考えたくない。そう、無意識に思っているようで。)うーん……言われたことないと言えば嘘になるけど。男の人はやっぱり小さくて守ってあげたくなるような子が好きだとは思ってたわね。前にそれは人それぞれってある人に言われてからそういうものか、って思ってるけど。(だからといって自分に需要があるとは思えないのである。胸板ぺらぺら、と言われれば彼の身体を見て。)頼りないかどうかは身体つきじゃなくて性格じゃない?っていうか、私あんまり筋肉質な人は好みじゃないのよ。(何時も余裕があるように見える彼は頼りになると後藤は思っているし、適度な筋肉は良いが、ムキムキな男性は少しばかり苦手なのである。2枚のスカートを手に悩んでいれば、掛けられた言葉。卵焼きとレタスと言う表現に小さく吹き出せば、彼曰く卵焼きの方を棚に戻して。)じゃあ、こっちにしようかな。(とグリーンのスカートを手に取り会計を。)

随分昔の話だな(笑)さてはおマセだったな?

(彼女の応答に一笑、「やっぱり」と目で語って居る様だが敢えて言葉は発さず。)あ、そう。でもまあ、そうだなあ…勘違い野郎って結構いるよな、何処にでも。生理的に無理っていう破壊力抜群の言葉をよく聞く気がする…そういう人って漫画とかドラマの観過ぎなのかな。俺も裏で女子にキモイとか言われてそう…怖いなあ。(自虐的な発言の割に、何故だか楽しそうな声色だった。自分への消極的意見は普段耳に入らないが、きっと何処かでは囁かれているだろう。けれど目の前の彼女なら裏では無く直接指摘してくれる様な気がしていた。)へー、それは光栄。てっきり俺の事は女友達みたいな感じで見られてるのかと思ってた。(彼女の謝辞には触れず。返答は正解と思ったが、これ以上続けると此方が間違えてしまいそうだった。女性の多い家庭で育った為、如何にも男らしさを見失いがちだと自覚が有る。過去にも女性から異性として意識された経験が其程多くも無いので、あまり邪推しない様に、純粋に彼女の言葉を受け取っていた。)確かに綺麗な表現をすると、守りたくなる様な人が好きな男って多いんだろうけど。言ってしまえば支配欲みたいな感じじゃないかと思う。…その"ある人"って、ゆりあにとってどういう人?(所謂一般論を決して否定する心算は無いが、少し棘のある言い方になったのは自分自身も同性に偏見を持っているのだろう。"ある人"は、彼女の持つ価値観を変えたのだろうか、少し気になって訊いてみる。)そう?でも筋肉ない人って、悪い人に絡まれたら殴られてボコボコにされると思う。凄くダサいと思う。だから俺のお薦めは筋肉質で爽やかな運動部だな。ゴリマッチョ推し。(細身である事に其処まで卑屈に成って居る訳でも無く、改善の努力すらしないが、自分を肯定してくれている事がひしひしと伝わっても尚も貶める様に言う。彼女にそんな心算が無いのは解っているし、自身にも勿論無いけれど、若し自分が特別な意味で彼女の隣に立つ事を想像すると、如何にも自信の持てない部分があるからで。)お、レタスが採用されたか。(自分の意見が反映されて若干嬉しそうに会計へ。彼女へのプレゼントを物品では用意していない為、此処は一つ、「俺に払わせてよ」と財布を出して。)

白鳥くん程じゃないわよ?きっと(笑)

生理的に無理、って言葉の破壊力は抜群よね。そう言われたら直しようがないじゃない?ありえる…ような気もするけど、漫画だったら少女漫画よね?勉強のつもりで読んだ、とか?今の所聞いたことないから大丈夫じゃない?もし聞いたら教えてあげるわ。(勘違いは誰にでもある事だが、度を超えてしまえばどうしようもなくなるわけで。後藤の耳に彼への消極的意見は入ってこないが、もし聞こえてきたら教えるのは親切のつもり。彼がなんだか楽しそうだから後藤もくすりと笑って。)女友達だったらもう少し婉曲的な表現をするわね。女同士の友情って結構難しいのよ…その分男の人相手だとはっきり物が言えて良いわ。白鳥くんは私がはっきり言ったくらいじゃ関係性を変えようとは思わないでしょ?(彼の思いなど露知らず。女友達が嫌いな訳ではないが、気を遣う事は確かで。元々はっきりした性格の後藤、過去にそれが原因で揉めた事もある。だから、嫌われたくなくて無意識にそうしてしまうようになったのだ。対して男性相手なら嫌われても仕方ないと思えてしまう。ただ、内に入れた相手にははっきり物を言うし、言ってもそう簡単に嫌われないだろうと少々楽観視しているところがあるのだ。)支配欲ね…そう言う風に考えた事はなかったかも。見方によっては確かにそうなるか。それだとなんだか怖い。…その人?うーん、お茶目な先輩?話していて楽しかったのは確かよ。最近会ってないけど。(彼の考え方は後藤には無かったもので、見方によっては確かに綺麗な表現でしかないのかもしれないと思った。支配されるなんてたまったもんじゃない、とも。“ある人”の事を聞かれれば少し悩んだ末にそんな回答。会えば話すだろうが暫く会っていない。元気らしいことは風の噂で伝わってきているが、その程度と言ってしまえばその程度の仲である。友人と呼んでしまっても良いか少々悩む相手という事もあって、無難に先輩としたけれど。)ねぇ、悪い人に絡まれてボコボコにされる方がドラマや漫画じゃない?爽やかな人は良いと思うけど……私の勝手だけど、凄い筋肉質の人ってなんかちょっと怖いのよね。(あはは、と珍しく声をあげて笑って。最後少しだけ声を潜めたのは、筋肉質の男性に対する偏見だと理解しているから。適度な筋肉は良いと思うが、彼の言葉を借りると“ゴリマッチョ”な人は怖いイメージなのである。)私はどっちも好きだから。(と彼の意見を採用した理由にはなっていないけれど。財布を出す彼に申し訳ないとは思ったが、プレゼントの代わりだろうと察すれば「これだけね。」と。そして会計が終わり、店を出れば礼を言って。)ありがと、大事に着るわ。そろそろお昼ね。何食べる?(そういえば彼の食の好みを知らないなと思った。)

え?俺はどっちかっていうと子供っぽくない?

そうそう。もうどうしようもないから話さないようにするしかないよな。勉強…の人もいるだろうけど、男子も普通に少女漫画読むよ?女子だって少年漫画読んでる人いるでしょ?…ああ、その時はよろしく。(誰某が貴方の悪口を言っていました、と教えてくれるのだろうか。其れは奇妙で可笑しい、彼女の報告を想像して思わず笑みが零れた。)ああ確かに、女子同士の会話はオブラートに包むのが大事だよな。…そうだね、それでゆりあを見る目が変わったりはしないし、俺は寧ろストレートに言ってくれた方が助かるな。遠回しに話をされると懐疑的になっちゃいそう。(同じ内容でも言い方一つで相手の期限を損ねてしまう事も有るだろう。そう云う気遣いは、続けば疲弊するのだろう。姉が2人もいれば女子事情も其れなりに察しは付く。自身に対して直接的な物言いが出来るなら、其れはお互いにとって良い事だと。)皆が皆そう思ってる訳では無いんだろうけどさあ…本人も気付いて無いだけで、本能的には支配したいって欲求はあるんじゃないかな。って考えると確かに怖いね、ごめん、こんな話しして。お茶目な先輩…そう。好きなの?(その先輩に対して恋愛感情があるのか、何となく問うてみる。冷静な彼女の事だ、きっとさらりと否定して来るだろう、と思いながらも。)確かに、俺もドラマの見過ぎかな?だけど割と近くに不良な高校があるからなあ…いつ喧嘩売られるか。筋肉質の人は実は俺も怖い。だから結局一生懸命鍛えてゴリゴリになっても女子から人気があるのは適度な筋肉の細マッチョなんだよな。(彼女が笑うから、此方も応えるように笑みを零す。世にはモテたくて筋トレをする男子も居るというのに、無慈悲なものである。)そっか、まあどっちも似合ってたし。ゆりあはやっぱりセンスが良い。(うん、と感心するように頷き一つ。会計を済ませ店外へ出れば彼女の謝辞に柔らかく微笑んで返す。そして人混みに紛れる前に、先程よりも自然とまた彼女の手を取って)そうだなあ…パスタとかどう?(食に対して特に此れと云った拘りは無いが、通りをもう少し進んだ所に在るイタリアンダイニングを指差し。)

そう?初恋は幼稚園の先生、って感じするけど(笑)

極力避けるしかないわね。あぁ、言われてみればそうね。白鳥くんも読んだりするの?(嫌いな訳ではないが、本も漫画も自分で買ってまでは読まない後藤。時折友人に勧められて借りる位だ。彼はどうなのだろう?興味本位だけど問うてみた。)正直面倒だとは思うけど、集団生活で上手くやっていくには必要だから…私もそういうタイプ。はっきり言ってくれた方が誤解もないし、解りやすい。白鳥くんがそういうタイプで良かった。(女の世界と言うのは厄介だ、だがそれに逆らう事はもっと厄介な事になる。それを知っているから、合わせるようにしているだけで本当は彼のようにざっくばらんに話せる相手の方が有難い。ふ、と微笑んだ。)ううん、大丈夫。んー…好きか嫌いか2択だったら好きだけど、恋愛感情ではないわね。(ごめん、と言われれば気にしてないという様に軽く首を振って。先輩について問われれば、さらりと返して。良い先輩だとは思うが、それだけ。それよりも彼がこんな風に聞いてくることの方が意外だった。そう思っている事を顔には出していないつもりだが、聡い彼には気付かれているかもしれない。)そういえばあるわね。私は関わった事ないけど…口喧嘩に持って行けば勝てるんじゃない?(なんてくすくす笑い。勿論、冗談だが。)確かにね、一生懸命鍛えてる人には悪いけど。(無慈悲だと言われようが、世の中そんなものである。)そう?ありがと。(そんな言い方だが、褒められれば嬉しそうに口元綻ばせて。外に出て自然に手を取られれば、今度は握り返す。無意識だった。)パスタ好き。良いんじゃない?(と、指されたイタリアンダイニングを目指そう。)

いやいや初恋もまだだよ、お子ちゃまでしょ?(笑)

最近は読まないけど、前は姉さん達から読まされてたよ。展開似てるけど面白いのも結構あるよなあ。ゆりあは少年漫画とかあんまり読まなさそうだね。(幼い頃から二人の姉に少なからず影響を受けて育って来た。特に此の作品が好きと言える物は無いが、或る程度は少女漫画も読んで来た。)郷に入っては郷に従え…じゃあ無いけど、協調性が問われるというか…気を遣うよなあ。お疲れ。(微笑を浮かべる彼女を見れば、きっと自分と居る時は少しは楽で居てくれているだろう、と自負の気持ちから労る様に軽くぽん、と肩に触れる。)そうかあ…恋愛感情が無いって言うか、そう云う風に意識した事が無いって所かな?(我ながら変な事を訊いてしまったと思ったが、困った素振りが無いのは今まで散々可笑しな事を言ってきたから耐性が付いたのか、彼女持ち前のポーカーフェイスなのか。更に言葉を発したのは憶測でしかないが、彼女が返しに少し悩んだ様に見えたから。)俺の友達は何人か通ってる人いるよ、良い人だけど脳味噌は空っぽそう。確かに口喧嘩なら勝てるかもなあ…喧嘩してるうちに拳が飛んできそうだけど。(口論の途中で殴られる姿を想像しながら此方も一緒にくすくすと笑って。)ゆりあも筋トレとか普段してる?(他の女子と比べてもスタイルの良い彼女の事、ゴリゴリとまでは行かないまでも多少は鍛えたりしているのだろうかと素朴な疑問。目的の店内に入ると、順番待ちも無くテーブルに案内された。「直ぐ入れて良かったね」と微笑みながらお互いにメニューを捲る、どれも美味しそうだ。)

結構意外。…って言ったら怒る?(笑)

白鳥くんってお姉さんいたんだ…妹がいそうなイメージだったわ。うん、少年漫画って絵があんまり好きじゃないのよね。(なんとなくだが、彼には妹がいるような気がしていた。少しばかり意外な事実にぱちりと瞬き。)男同士だとその辺はさっぱりしてるわよね。そういうとこ羨ましいって思う時あるわ。(なんて。肩に触れられれば、ありがとう…とでも言いたげに彼を見上げて。その言葉を口には出さずとも彼には伝わっている筈、と言わんばかりだ。)そういう事。意識しちゃうようなシチュエーションがあった訳でもないし。それに、………なんでもない。(というのは先程の漫画の話に掛けて。言葉を紡ぎかけて止める。もし彼が続きを促したとしても、きっと今の後藤は言う事を拒否するだろう。)そうなんだ。私、家は学校から少し離れてるから。花鶏周辺に進学したのって、同じ中学ではいなかったな。…拳が飛んできて、避けたら更に怒らせそうね。(と想像してみれば、笑いが込み上げてくる。こんな何気ない彼との時間はとても楽しい、そう思った。)多少はね。一日30分とかだけど。後は、一人の時は出来るだけ階段使うとか。(問われればこくりと頷いて。流石にこのスタイルを何もせずに維持するのは難しい。席に着いてメニューを捲れば美味しそうな写真に少しばかり悩み。暫し考えた後に「決まった。」と明太子ときのこの和風パスタの写真を指して。)私はこれにしようかな。

怒りはしないけど…ちょっとショックかもね?(笑)

意外?こう見えて実は末っ子長男なんだよ。俺は少女漫画の目が大きいのが少し苦手だな。(面倒見が良さそうとでも思われたのだろうか、そう考えると悪い気はしない。素っ気無い言葉とは裏腹に声色は明るく何処と無く嬉しそう。)男だってネチネチしてる奴は居るよ、さっぱりしてる女子が居るのと同じように。(此方を見上げて来る彼女に、優しく微笑み返す。言葉にはしないが密かに「君と同じ様な考えの人も少なからず居るから、そんな人と仲良くなれれば良いね」と気持を込めて。)実際そういう雰囲気って普通に生活してたら無いからなあ。意識しちゃうシチュエーションがあったらどうなってたか、俺としては気になりますけど?(彼女が何を言い掛けたのか皆目見当も付かなかったし、関心は有るので気になった。が、言おうとして止めたのなら聞くべきでは無いと判断。代わりに他の気になる所を突いてみる事に。)そういえば駅使ってるって言ってたもんなあ。何で敢えて雛ノ森にしたの?校則が緩いから?…いや、俺にそんな俊敏さは無いから直撃するに違いない。(彼女の家がどの辺りかは知らないが、もっと近くに高校も在るだろう、と云うのは想像でしか無いが。笑って居る彼女に対し此方は真顔でそんな事を。)毎日か…偉いな。継続は力なりと言うか、美人は一日にして成らずと言うか…やっぱりスタイル良くて何もしてません、なんて言ってる人は嘘吐きだ。(うんうん、と納得した様に。彼女の指差すメニューを見て「お、いいね」と一言。呼び鈴を鳴らし、やって来た店員に「明太子ときのこの和風パスタ」と「トマトと海老のジェノベーゼ」を注文。)そういえば、こうやってゆっくり話すのって冬休みぶりだよな。母さんとの外食、楽しかった?(注文を終え落ち着いた所で、思い出したように以前の話題を挙げてみて。)

ごめんなさい(笑)そう言う私も似たようなものだけど。

妹を可愛がりすぎるあまり意地悪言ってそうなイメージだったわ(笑)お姉さんだったのはちょっと意外だけど、女性に囲まれて育ったっていうのはなんとなく納得できるかも。あぁ…多少ならいいけど、たまに度が過ぎるのあるわよね。可愛いを通り越してちょっとホラーな感じの時。(なんて彼が意地悪な人だと思っているかのように聞こえるかもしれないが、恐らく彼は嫌いな相手にはそういうちょっかいは出さない。愛情の裏返しとでも言えば良いのだろうか?それが後藤の見立てである。)男とか女とか、そう言うもので括るのは良くないって事ね。(と纏めてみて。見上げて返された優しい笑み、なんとなくではあるが意味を汲み取って。口元緩めてふ、と笑みを返した。)………今、もしその先輩とそういうシチュエーションがあったとしても何も思わないと思う。(彼の質問から逃げるという選択肢もあったが、あえて答える事を選んだ。言葉を紡ぐまでに出来た間は、答えを考えていたからではなく答えるかどうか迷っていた間なのだが、彼はそれに気付くだろうか?)校訓が良いなって。あとは進学校とはいえ就職にも強い所。…もし顔が腫れたら、湿布を差し入れしてあげる。(真顔の彼が余計に可笑しくて、笑う。もしもの話ではあるが、実際にそうなったら本当に湿布を差し入れるつもりだ。)本当に何もしないでスタイルが良い…ってなったら良いなって思わないでもないけど、何かを続けるっていう事が大事だと思うのよね。(それは自論だが。続ける事で、意識が高まるというのはあると思うのだ。注文をしてくれた彼に「ありがと、」と。)うん。ご馳走したら驚かれたけど、喜んでくれた。うち、私が小さい時に両親離婚してて、それからずっと母が仕事も家事も育児もって頑張ってくれてたから…「まだ高校生だけど、家事とバイト位は出来るから、少しは自分の為に時間もお金も使って。」って伝えられた。(その時の母の顔を思い出して、口元緩む。大切な人に伝えたかった事を伝える切欠をくれた彼には感謝しかない。)

確かにゆりあは恋愛体質と見せかけて硬派な印象あるな

え、俺そんなイメージある?自分は溺愛してるけど妹にはうざがられる…っていうか、其れって好きな子に意地悪する小学生みたいじゃないか。数センチ大きさが変わるだけで怖くなるときあるし、バランスって大事だよなあ…(心外と言いたげな顔で目を一度大きく見開き、然し思い返せば彼女には随分意地悪をしてきたし、そう云うイメージを抱かれるのも納得でき、思わずふふっと小さく笑う。)へえ、そうなんだ。じゃあ…(答が返って来た事が意外で、陳腐な反応をしてしまった。少し間が空いたと気付いた瞬間、躱されると思ったから。…彼女は「今」と言った。時間と共に先輩に対する恋愛意識への足懸りが風化しただけで、もし過去だったら?なんて新たな疑問が浮かぶ。然し過ぎた事を気にしても仕方が無いし、そもそも会った事も無い人を気にするのも変だ。言い掛けた言葉を飲み込んで「やっぱり何でも無い」と曖昧に笑って。)校訓?そういうのも調べて受験したんだね。進学も出来るし就職も出来るから、選択肢は広がって良いよなあ。(自身は入学前から、高校を卒業した先どうしたいか決めて居たが、世の中そう云う人ばかりでは無い。じっくりやりたい事を考えるには確かに向いていると思った。)ありがとう、でも恥ずかしいから腫れた顔はできるだけ見ないようにして欲しい。(男らしくないのは重々承知、それでも格好悪い所は余り見せたくないものである。)それは解るな。最初から持っているものは価値にも気付けないし。面倒な日でも欠かさずやれば、自信にも繋がるし。(彼女にとってそれはスタイルの維持であり、自分にとってはピアノの練習だろう、共感するように頷きながら。―初めて聞く彼女の家庭の話。合間で相槌と打ちながら静かに聞いて)それなら良かった。ゆりあがそういう気遣いのできる子に育って、母さんも嬉しかっただろうね(予想は出来た事だが彼女の言葉には矢張り重みが在った。離婚したことで娘に対し責任を感じ、後ろめたさも在るかも知れない。繊細な部分なので此れ以上は踏み込まないが)話してくれてありがとう(と、最後に嬉しそうに微笑もう。)

恋愛体質じゃないのは確かだけど…見た目そう見える?

あはは。だって白鳥くん、時々小学生みたいな事言うなって時あるもの。そうね、描けない人間が勝手な事言うなって言われるかもしれないけど、怖いものは怖いのよね。(心外、とでも言いたげな様子に声あげて笑って。悪い意味で言った訳ではないし、それが彼らしさだと思ってはいるのだ。それをうまく口に出来ないだけで。)じゃあ?(と不思議そうに問うものの「何でもない」と言われてしまえばそれ以上詮索は出来なくて。「今」なら何も思わないと解るけれど、以前だったらどうだったのか?それは後藤にも想像できなかっただけである。じゃあ何故今なら解るのか。それは……)調べたっていうか、学校説明会で話があったの。それで良いなって。(今のようにしっかりと将来モデルを志すようになったのは、高校に入る直前の春休みだ。それまではモデルになりたいという気持ちも今ほど大きくなかったし、迷いも大きかった。だから、雛ノ森を選んだのだ。)実際、面倒だと思う日もあるけど、それで1日でも休むとちゃんと身体に返ってくるから。(彼にとってそれはきっとピアノなのだろう。ちゃんと聞いた事はないが、冬休みにもレッスンに通っているのだから、そうなのだろうと。――家族の話、友人同士で話題に上がる事は滅多にない。それに後藤自身はあまり気にしてないとはいえ、他から見たら可哀想と思われても仕方ない事も理解している。だから、後藤の家庭環境を知っている友人はあまり多くない。しかし彼なら変に同情する事もないだろうと。)伝えたいし伝えなきゃとは思ってたけど、いつも言えなくて。言う切欠をくれたのは白鳥くんよ?だから、私の方がありがとう。(微笑まれれば感謝を告げて。少々照れたように微笑み返そう。そんな話をしているうちに、頼んだパスタが運ばれてくる筈で。)

お洒落な人ってそう見えるんだよなあ、完全に偏見だけど

しょ、小学生…そんな事無いと言いたい所だけど、否定は出来ないんだよなあ。遺憾だ。(珍しく声を上げて笑う彼女に、反論する術も無く此方は少々複雑な表情を浮かべた。勿論否定的な意味で言われた訳では無と判って居るが。)…いや、気にしないで。(彼女ならこう言えば追求されないだろうと、其の優しさに逃避してしまう。気になる事に変わり無いが、軽々しく問える程無神経でも無かった。自分自身にもう少し時間が必要なのだ。いつか聞いてみようと今は内に秘めた儘。)学校説明会?ああ、そういえば言ってた…かもなあ、もう覚えてないけど。(ううん、と思い返してみるが矢張りはっきりとは思い出せない。偏差値と進学率、専門性を重視して説明会に臨んだ為か、それ以外の部分は気に掛けなかったのかも知れない。)やっぱりゆりあは努力家だ。もうそこまで来ると、一日休んだら逆に調子が悪くなりそうだね。…そういえば昔、一日サボると取り返すのに三日掛かるって、常に母さんに言われてたな。(幼少期に口を酸っぱくして言われていた。其の言葉の御陰で今が在るし、間違いでは無いのだろうが「流石に三日は嘘だと思ってるけど」とくすくす笑う。)うん、近すぎるからかな、親に対しては中々照れ臭くて本心を伝えられなかったりするよな。俺なんかが役に立てたなら本望だよ、どういたしまして。(軽く提案をしただけで、実際大した事はして無いと自認している。少し擽ったいが彼女の謝辞は素直に受けよう。間も無く注文のパスタが運ばれて来た。店員に軽く会釈をして「さ、食べようか」と微笑み掛けた後、両手を合わせ「いただきます」と。)

私そんなにお洒落じゃないわよ?まだまだ勉強中。

大丈夫、白鳥くんのそういうところ嫌いじゃないわ。(まだ後藤の笑いは止まらない。いつものお返しのつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったようで。でも珍しい彼の表情を見れたことが内心嬉しい後藤なのだ。)…うん。(そう言われて尚踏み込める…彼と自分はそんな関係ではない。以前に比べて少しは距離が縮まった気はするが、そこに至るまでにはまだ距離も時間もかかるのだろう。そう思った。)もう2年前?になるんだもの、覚えてなくても仕方ないわ。私だって印象に残ったから覚えてるだけで、他の話は殆ど忘れてるし。(と後藤だって覚えていたのは偶々なのだから。)そうなのよ。熱とか出してどうしようもなく休むじゃない?そうすると治ってから身体が重くなった気がして…実際はそんな事ないのかもしれないけど、そう感じるのよ。確かに、よく言うけど3日は盛り過ぎ。(彼の言葉にくすくすと笑って。きっと彼も自分と似た経験があるのだろう、だからこその「3日は嘘」発言だと思った。)近いから蔑ろにしがちなんだけど、近いからこそ偶には…ね?(微笑浮かべて。普段なら話していて恥ずかしくなってしまうような話だが、何故か彼相手には素直に話すことが出来て――パスタを食べてもまだ時間はある。彼と過ごす休日は少しばかり擽ったくて、でも楽しくて。何気ない事でも話は弾む。そんな彼との――今日はデート、と称すべきだろうか?は過ぎていく。別れ際、妙に名残惜しくなってしまってしまう事、無意識に去りゆく彼の服に手を伸ばしそうになる事、今の後藤はまだ知らない。)

そう?凄くお洒落だと思うんだけど…奥が深いんだなあ。

…それ、フォローになってないんだけど?(はあ、と溜息一つ。げんなりしつつも、可笑しそうに笑い続ける彼女を見ていると「まあ良いか」等と思ってしまう辺り如何かしているだなんて。此方から閉して仕舞えば矢張り詮索はされなかった。其れは予想通りで安堵したのだが、同時に自身の狡さを反省する所でも或る。「ごめん、ありがとう」と小さく呟いた。彼女には聞こえなかったかも知れないが。)関心がない事って直ぐ忘れちゃうよなあ。覚える気が無いんじゃなくて、覚えられないというか…。ああ、それ凄くわかる。毎日やるって脳が決め込んでるみたいで、急にやらなくなるとびっくりするんだろうね。やっぱり!だってそれだと一日おきにやってたら永遠に退化し続ける事になるしなあ、それは絶対に可笑しい。今思うとあの言葉を信じて従順だった自分が愚かだよ。(あはは、と珍しく自嘲めいた笑みを零す。勿論其れは底意では無いけれど。)親孝行とか普段中々出来ないけどさ、俺も何かしてみようかな、…偶には。(自身の発した何気ない発言が、彼女に影響を与えた事。更にそんな彼女から今度は自身が影響を受けている。感謝を伝えるなんて照れ臭いけれど、気紛れでは無くそうしたいと思えたのは彼女の御陰だ。――今日はゆりあの為の日だからと、大見得を切ってそんな事を言ったのだが結局楽しんでいたのは自身の方かも知れない。殆どノープランで臨んだ今日も、終わってみれば一瞬の事の様だった。帰宅後、彼女も楽しんで居てくれたなら良いと思い返す。何でもない振りをして人混みを理由に手を握って仕舞った事、その他にも色々と恥ずかしい発言をした気がするが、「今日は一日彼氏をする日だったから!」と今更になって赤面しつつ誰にともなく言い訳をするのだった。)