(3月14日。先月ぐるちゃで「お返し期待してて」等と送り付けたが今回は悩んでいた。常に一緒に居る様な間柄でも無く好みも知らないのだ。美意識が高そうなので高カロリーの物は避けた方が良いだろうか、食べ物よりもコスメの方が良いだろうか。彼是と思惟したが結局六本木のケーキ店でマカロンを選んだ。白い箱に白いリボンというシンプルな包装を小さな紙袋に入れて。困ったことに事前にアポを取っておらず彼女の行動パターンも把握していない。ぐるちゃで連絡を取れば良い話なのだが敢えて其れをしないのは或る種ドッキリを狙ってか。昼休みに教室を覗いてみたが居ない様なのでクラスメイトに問うと幾つか候補を教えて貰えた。その足で先ずは食堂へ。――目当ての人は意外にも直ぐ見つけられた。一緒に卓を囲むのは友人だろうか。そんな事もお構い無しに背後から近寄ると嘗ての様に、けれどもあの時よりは優しく、ぽんと彼女の肩に触れた。突然の事に驚いてくれただろうか、相変わらず薄い反応なのだろうと予想はしていたが。彼女が此方へ振り向いたなら、)この間はありがとう。来年は手作りを期待してる。(と笑顔で強引な要求をしつつ紙袋を手渡せば軽く言葉を交わして自らの教室へ戻るのか―。)

(先月彼にプレゼントを贈ったが、それは『遅くなった誕生日』との名目。忍ばせたチョコレートの意味については何も告げなかった――いや、告げられなかったと言うべきか。彼はそのチョコレートを早すぎるバレンタインと受け取っているようだ…というのは先日のぐるちゃの内容から察していた。「お返し期待してて」の言葉もあった為、3月14日を気にしていた後藤。そして今日、朝から誰にも気付かれない程度にではあるが周囲を気にしていた。午前中は何事もなく過ぎ、昼休み。仲の良い友人から声を掛けられて食堂へ、昼食を摂りながら談笑していればぽん、と誰かが肩に触れた。驚いて…とは言ってもいつもの如く、僅かに目を見開くだけで殆ど顔には出ていないのだけれど。振り返れば予想外のタイミングでの彼の登場に、珍しく周囲にも解るほど驚いた表情を。)白鳥くん!?あ、うん、どういたしまして。……え、(彼の言葉にまたしても驚かされ、そして少々呆気に取られているうちに、彼は去ってしまって。軽く言葉を交わした事は覚えているが内容は右から左、彼が去ってもまだ驚きを隠せていない後藤を友人たちがからかうのは、もう少し経ってからの事。)