紙飛行機を飛ばすとスカッとするよね。

んー…自分では頑張ったと思ったんだけどね。ま、無理だったか。(ふうっと吐き出す息は軽やかに。もう3月に入ったから、吹き付ける風も真冬に比べると随分優しくなった。だが、テストの結果は辛口だった。5点満点の0.5点。お情けで一つだけ三角を付けてもらったから0点を免れたが、ほぼほぼ0点だ。)……こういうのは飛ばすのが一番だよね。(真っ赤なネイルの指先でするすると紙飛行機を折ると、大きく腕を振り被って青空に向けて飛ばそう。)あー、思ったより飛距離のびた。(テストで悪い点を取ったようには見えない気楽な感想だ。)

そうなの?…私のつくった紙飛行機、全然飛ばないんだぁ…。

(時々お菓子やお茶を持参しては、学園内でティータイムをしている中村。だんだん暖かくなってきたから、屋上にでも行こうかと思い立ち、ハンドメイドの手提げかばんを片手に屋上への扉を開いた。目の前に広がる庭園にほんのり笑顔を浮かべていると、ひとりの少女を発見。クラスは違ったはずだが、中村が生活している学生寮付近で何度か見かけたことがある気がする…そんな少女が紙飛行機を飛ばしているのを見れば、)わぁ…(と、思わず感嘆の声を漏らしつつ、少女に近寄り)……こんにちは。紙飛行機、飛んだねぇ。青空の下をすいーって飛んで、ロマンチックだね〜(ほわほわと笑みを浮かべ、彼女に話しかける。とても人懐っこい口調ではあるが、初対面であることから一定の距離は保ったままでいよう)

問題なのは作り方か飛ばし方か…原因探ってみよ。

(中学時代も、点数の悪いテストはこうして飛ばしたものだ。以前はぐしゃぐしゃに丸めて如何にもゴミらしく外に投げ捨てたから、これでもお上品になったと言い張るけれど。教師や委員長が居れば苦言を呈されても可笑しくなかった場面だが、それを目撃していたのは幸いにも大らかそうな少女だった。あっという間に近付く人影に瞳を丸くして、それからすぐにはふりと砕けた笑みを浮かべ、空っぽになった手をひらりと振って彼女にご挨拶。)どうもー。そう?けど、ぶっちゃけ自分で思ったより上手く飛んだと思ってたから嬉しい。ありがとね。……っと、ごめん。私、3年4組の柴田早弓っていうんだけど…名前教えてもらっていい?(言い方がきつくならないようにと内心ではドキドキもしながら、初めましての彼女との適度な距離感をこちらも手探りしていた。)

んん、両方かも…。え、一緒に原因探してくれるの?

(いきなり声をかけた中村に対し、驚いたように目を丸くしていた彼女。しかしすぐにその表情が笑みを象るのを見れば、なおのこと嬉しそうににこにこするのだろう)ふふ、本当ね。…紙飛行機の上に乗れたら、空を自由に飛べて気持ちいいだろうねぇ(なんて想像してみれば嬉しそうに彼女に話していたものの、彼女が自己紹介をしてくれれば)あ、同じ3年生なんだ。柴田さんって言うんだねぇ。…私はね、3年5組の中村和花って言います。お隣のクラスだね(彼女の名前をのんびりとした口調で復唱すれば、自分も名乗ろうか。そこで、のほほんとした表情を少しだけ申し訳なさそうなものに変えれば)突然話しかけちゃってごめんね。びっくりしたでしょう…私、小さい頃紙飛行機をよく飛ばしてたから、懐かしくて嬉しくなっちゃって(と、眉を下げつつもふにゃんと笑い、そう謝罪するのか)