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冬は晴れの日が多いイメージがあるなあ。
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(穏やかに晴れた冬の日。暫く寒い日が続いたが今日は風も少なく気温の割には暖かさを感じる陽気。4限を終え友人達と昼食を摂った後屋上へ来ていた。何方かと云うとインドアな白鳥だが「たまには日光浴もしないと」と友人達も誘ってみたが矢張り冬の屋上に好んで行く様な者はいなかった。膝掛と古典文法の参考書(書店にある中で一番薄い物を購入した)を片手に1人、フェンスを背凭れに隅に座り込んで自習を始める。)…る、らる、す、さす、しむ、ず、じ、む、むず、まし、まほし……る、らる、す、さす、しむ、ず、じ、む、むず、まし、まほし…ふあ。(呪文のように幾度も繰返し唱えるが徐々に睡魔に襲われて欠伸が出てしまう。その後も何度か声に出し覚えようとするも此の陽気、更に食後という事も相俟って何時しかすうすうと寝息を立て始めた。手に持っていた参考書はするりと手から落ちる。少しすると空風が吹き、白鳥が起きる気配は全く無いが参考書は風に舞って花壇へと――)
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晴れているのに寒いって日は多いかも。
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(連日続いた寒い日はどこへ行ったのやら。窓の外を見れば青い空が見え、スマホに入っている天気予報アプリでは晴れマークが出ている。そんな冬のとある日。午前中の授業をすべて終えた多賀谷は屋上へと訪れた。こんな晴れた冬の日はなかなか訪れないだろうし、偶には屋上でご飯を食べるのもありだろう、と思ったからだった。だが、生憎いつも一緒にご飯を食べている友人は委員会の集まりがある為、ひとりでのお昼ご飯となってしまった。)ま、これはこれでありかも…。(なんてひとりごとを言いながらも屋上へと続く扉を開け、屋上へと足を踏み入れれば目に入ってきたのは睡眠をとっている男子生徒、と花壇の上の参考書。落ちたのか、置かれたのか、それは定かではないが、きっと寝ている彼のものだろう、とそれを拾い上げ、軽く砂を払った後に彼へと近づけば、軽く肩を数度叩いて。)…おーい、…おにーさん?起きてー。こんなとこで寝てたら風邪ひくぞ。(参考書とお昼ご飯片手に彼の起こそうと試みる。)
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お日様の入射角の問題だからなあ。寒いのは嫌い?
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(微睡みから幾許か、余り時間は経っていなかった。未だ眠りが浅かったので少女の手が肩に触れればあっさりと瞼を開く。一瞬寝ぼけ眼でぼんやりと彼女を見ていたが間も無く意識がはっきりしたのか団栗眼を屡叩かせる。)あれ?俺寝てたのかあ…起こしてくれてありがとう。君は命の恩人だね。(くすっと小さく笑いながらお礼の言葉を。彼女の手に在る参考書の裏には小さな文字で「白鳥春樹」と書いてある。)それ、実は俺の愛読書なんだ。ランチタイムのBGMに、俺の音読なんてどう?(此れが世に云うぼっち飯かと失礼な事を思ったが悟られぬよう柔らかく微笑む。一人で読んで居ると寝てしまう程つまらない本なので一緒に居て欲しいだけなのだが。隣に座らないか、と言わんばかりに右手でぽんぽんと隣の空いたスペースを叩いた。)
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嫌いって程じゃないけど、あんまり好きじゃない。先輩は?
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(思っていたよりも眠りは浅かったらしい、軽く肩に触れただけで閉じていた瞳を開いた彼。開かれた彼の瞳を思わずじっと見つめて。)え、ああ、ぐっすりと眠っているのかと思ったけど、意外とそんなでもなかったんだな、って…。いや、気にしないで下さい。偶然ここに来ただけなので、…それに命の恩人って大袈裟な…。(はは、と軽く笑いながら、軽く首を横に数度振って。手に持っていた参考書を彼に渡さねばと思い、差し出そうとした際に裏表紙に見えたのは人の名前。きっと彼のものだろう。)…白鳥、先輩…で良いのか?…古典の参考書を愛読にしている人ははじめて見た。……ランチタイム、どうせなら楽しいお話が良いんだけど…。(柔らかく微笑む彼に対し、多賀谷は少し拗ねた様な文句言いたげな表情を浮かべてみせる。けれど、彼のお誘いを断るつもりはないらしい、隣の空いたスペースに腰を下ろせば、)あ、そういえば自己紹介してなかった。1年の多賀谷薫。宜しく、先輩。
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夏よりは好きだなあ。雪降るとはしゃぐし(笑)
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(真直ぐに此方を見つめて来るので、何の対抗心か負けじと彼女の双眸を凝視して)揺すっても起きないくらいぐっすり寝てたら悪戯できたのにね?(彼女がその様な事をする子には見えないが自分だったら遣りかねない。顔に落書きされて5限を迎える自身を想像しくすくすと笑い)あははっ、そうかもね。だけど冬に外で寝るのって結構危険だよなあ。自分で言うのも何だけどさ。まあとにかく起こしてくれてありがとう。昼休みを無駄に過ごす所だったよ。(彼女に笑い返すと手を伸ばして参考書を受取り)はーい、2年の白鳥です。…まあそうだろうね。俺も古典の参考書なんて大嫌いだし。(ぱちぱちと瞬きして真顔で言ってのけたが清々しい程の手の平返しである。)楽しいお話か…そうだなあ(一応リクエストに答える気はあるらしい。ふむ、顎に手をあてと少し考える仕草を)じゃあ、週末のご予定は?(部活の話かクラス替えの話か…色々考えてはみたが特に思いつかなかったらしい。無難な質問をしつつ、参考書は彼女が座った方とは反対側に置いた。)薫ちゃんか…此方こそよろしく。(身長的に後輩かな?とかなり失礼なことを考えていたがどうやら正解だったようだ。普段の彼なら其のまま伝えてしまう所だが今回は初対面なので黙っておこう。)
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